これまで私たちは、遺伝子変異マウスを用いた解析から新規脂肪蓄積遺伝子ALK7を見出した。TGFβ受容体ファミリーの一つであるALK7は、成熟脂肪細胞に強く発現し、過栄養状態において脂肪分解酵素(リパーゼ)遺伝子発現を抑制することにより、余分なエネルギーを脂肪細胞に蓄積させる作用があることがわかった。従って、このALK7シグナルを抑制できれば肥満症やそれに伴う代謝異常の改善につながると考えられるが、ALK7シグナルを活性化するリガンドは解明されていない。 本研究では、高脂肪食負荷および肥満状態においてALK7シグナルを活性化する新規内因性リガンドの探索を行った。初めに高脂肪食負荷および糖尿病・肥満モデルマウスより単離した代謝系組織におけるTGFβリガンドファミリーの網羅的発現解析を行った。その結果、対照マウスに比べ、高脂肪食負荷および肥満状態において、脂肪組織で強く発現誘導される遺伝子4種を同定した。ルシフェラーゼアッセイにより、このうち3種リガンドはCripto 依存的にALK7リガンド活性を有することがわかった。次に、免疫学的手法を用いて脂肪組織におけるリガンド発現細胞を調べたところ、脂肪細胞、CD11b陽性マクロファージに発現していることがわかった。これらリガンドは、分化させた脂肪細胞、腹腔マクロファージには発現していないことから、肥大化した脂肪組織環境下において特異的に発現誘導しており、ALK7の新規リガンドとして機能する可能性が示唆された。
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