研究課題/領域番号 |
25860743
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
于 静 東京大学, 医学部附属病院, 研究員 (70623875)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脂肪細胞分化 / bivalent修飾 / ヒストン脱メチル化酵素 |
研究概要 |
(A) 脂肪細胞分化のポテンシャルにおけるエピジェネティクス制御の検討 脂肪細胞分化のマスターレギュレータであるPPARγ1プロモーターのbivalent修飾は、前駆脂肪細胞/幹細胞の未分化状態におけるPPARγの発現ポテンシャルを規定するヒストン修飾である可能性が示唆された。 脂肪細胞分化を制御する転写因子PPARγのプロモーターをクロマチン免疫沈降(ChIP)で検討したところ、ES細胞、マウス胎児線維芽細胞(MEF)、マウス白色脂肪組織由来の脂肪前駆細胞において、PPARγ1プロモーターにBivalent修飾(H3K4me3(+), H3K27me3(+))を認めた。一方マウス白色脂肪組織成熟脂肪細胞や未分化状態の3T3-L1、C3H10T1/2細胞では活性型H3K4me3(+)のみを認めた。MEFの脂肪分化では、PPARγ1プロモーターのH3K27me3が減少し、H3K4me3(+)は維持された。このBivalent修飾の変化は分化刺激であるDMI刺激に非依存性であった。 H3K27me3の特異的な脱メチル化酵素Jmjd3とUtxをノックダウンしたところ、分化に伴うPPARγ1プロモーターのH3K27me3の消失が減弱し、脂肪細胞分化におけるPPARγとその標的遺伝子の発現誘導および、中性脂肪の蓄積が抑制された。また、この抑制はPPARγの強制発現でレスキューされた。 脂肪細胞分化のプロセスには(1)PPARγ1プロモーター領域のH3K27脱メチル化酵素によるBivalent修飾の解消と、(2)分化刺激(DMI刺激)の両方が必要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(A) 脂肪細胞分化のポテンシャルにおけるエピジェネティクス制御の検討 (A1)MEF の脂肪細胞分化におけるBivalent 解消と遺伝子発現を結ぶメカニズムを解明するために、ChIP-qPCR, FAIRE-qPCR を用いて、H3K27Ac, H3K9Ac, PolII 及びヒストンアセチル化酵素の結合、クロマチンオープン状態などにより、Bivalent 解消後からPPARγ の発現上昇及び脂肪細胞の分化を制御するエピジェネティック機構を検討した。 (A2)MEF 細胞の分化における血清中成分によるエピゲノム制御の探索を行った。 血清中にヒストン修飾の解消を規定する成分を探索するために、FBSの活性因子などを除去したcharcoal stripped FBS やboiled FBS などによるPPARγの発現・脂肪細胞分化及びヒストン修飾の変化をChIP-qPCR 解析法により検討した。 また、血中成分で、脂肪細胞分化に必需なレギュレーターあるIGFIなど各種活性因子による脂肪細胞分化のポテンシャルの制御をChIP-qPCRにより検討した。 研究計画に従って実験を進めて結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
(A) 脂肪細胞分化のポテンシャルにおけるエピジェネティクス制御の検討 (A1)MEF の脂肪細胞分化におけるBivalent 解消と遺伝子発現を結ぶメカニズムを解明する。H3K27Ac, H3K9Ac, PolII 及びヒストンアセチル化酵素の結合、クロマチンオープン状態などにより、Bivalent 解消後からPPARγ の発現上昇及び脂肪細胞の分化を制御するエピジェネティック機構を検討する。 (A2) MEF 細胞の分化における血清中成分によるエピゲノム制御を探索する。血清中にヒストン修飾の解消を規定する成分を探索するために、FBS の活性因子などを除去した血清によるPPARγの発現・脂肪細胞分化及びヒストン修飾の変化を検討する。また、IGFIやHGFを含む各種活性因子による脂肪細胞分化のポテンシャルの制御をChIP-qPCR やマイクロアレイにより検討する。 (B) 筋細胞分化/脂肪細胞分化スイッチにおけるクロマチン制御の役割を検討する。筋細胞分化のマスターレキュレーターであるMyod1 の過剰発現によりMEF細胞は筋細胞へ分化する。その際にMyod1、PPARγ プロモーターのヒストン修飾変化をChIP-qPCR法により解析し、エピジェネティックによる筋細胞と脂肪細胞分化のスイッチの変化を検討する。 (C)血管内皮細胞からの脂肪細胞分化のエピジェネティクス制御機構について、HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)の脂肪細胞分化の各段階におけるエピジェネティクス変化を検討する。近年脂肪組織中の血管内皮細胞が白色脂肪細胞及び褐色脂肪細胞を産生すると報告された。HUVEC においてTGF-β2、BMP4 添加後、脂肪分化刺激後など各段階におけるヒストン状態やヒストン修飾変化を検討する。siRNA や過剰発現を用いて、各段階においてヒストン修飾酵素により脂肪細胞分化の制御を検討する。
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