研究課題
若手研究(B)
インスリン抵抗性は臓器間で不均一であり、2型糖尿病病態把握のためには臓器特異的インスリン抵抗性の正確な評価が必要であるが、ヒトでは包括的に検証されていない。本研究は臓器脂肪化の関連を包括的に解析し、臓器特異的インスリン抵抗性を形成する臓器連関因子を抽出し、臓器特異的インスリン抵抗性の簡便な指標の確立が目的である。非アルコール性脂肪性肝疾患NAFLD患者69名を対象に、体組成計測、安定同位体標識グルコース(6,6-2H2グルコース)併用高インスリン正常血糖クランプ検査にて臓器特異的インスリン抵抗性、MRSから肝細胞内脂肪含量・筋細胞内脂肪含量、肝生検サンプルより肝病理像・免疫組織学的評価を行った。得られたデータから種々の臓器特異的インスリン抵抗性指標を各々算出(平均±標準誤差)した。①肝インスリン抵抗性の指標:b-HGP 2.43±0.08 mg・kg-1min-1、b-HGP×空腹時インスリンの積(f-IRI) 32.0±2.0 [(mg・kg-1min-1)×(μU/mL)]、クランプ検査前後のHGP抑制率(%HGP)69.3±2.8% ②骨格筋インスリン抵抗性の指標:クランプ時のRd(c-Rd)3.52±0.10 mg・kg-1min-1 ③脂肪組織インスリン抵抗性の指標:クランプ検査前後のFFA抑制率(%FFA)77.0±1.4% ④肝脂肪化の指標:肝病理(脂肪化steatosis)Brunt分類5/33/15/16、MRSによるIHL 9.63±1.01mmol/l、ALT 60±4 IU/L ⑤骨格筋脂肪化の指標:MRSによるIMCL28.29±1.49 AU、徐脂肪体重50.2±1.3kg ⑥脂肪組織の脂肪蓄積の指標:体重82.3±2.7kg、BMI 30.3±0.9、体脂肪量82.3±2.7kg、体脂肪率36.3±1.3%上記結果の相関について検討したところ、肝インスリン抵抗性は、骨格筋・脂肪組織インスリン抵抗性と有意に関連、筋インスリン抵抗性も脂肪組織インスリン抵抗性と有意に関連し、各インスリン標的臓器間で、インスリン抵抗性が相互に関連していることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度の研究計画に沿い、非アルコール性脂肪性肝疾患NAFLD患者を対象に、体組成計測、安定同位体標識グルコース(6,6-2H2グルコース)併用高インスリン正常血糖クランプ検査にて臓器特異的インスリン抵抗性を算出した。さらに、核磁気共鳴スペクトロメトリーMRSから肝細胞内脂肪含量および筋細胞内脂肪含量を定量した。同時に対象患者で肝生検を試行し、肝病理像・免疫組織学的評価を行った。得られたデータから種々の臓器特異的インスリン抵抗性指標の算出が終了した。おおむね計画書通りに進展している。
平成26年度の計画は臓器特異的インスリン抵抗性を規定する因子の同定と簡便な指標の開発である。対象患者の保存血清を用いて、臓器特異的ホルモンとして、ヘパトカイン、アディポカイン、ミオカインの血中濃度を測定し、各臓器のインスリン抵抗性と臓器脂肪化、臓器由来ホルモン都の関連を検討することで、インスリン抵抗性規定因子を抽出するとともに、臓器特異的インスリン抵抗性の簡便な指標を求める予定である。
効率的な予算執行により端数が生じたため。次年度に繰り越し、予定通り、安定同位体標識グルコース併用高インスリン正常血糖クランプ検査に使用する安定同位体等の物品用品を購入する予定である。
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