研究実績の概要 |
H25-26年度、脂肪化とインスリン抵抗性の両者が多臓器と関連しているのは、脂肪細胞や骨格筋ではなく肝臓のみであり、肝臓が全身のインスリン抵抗性形成に中心的な役割を果たしていること、肝脂肪化と骨格筋インスリン抵抗性との関係から肝と骨格筋の臓器間ネットワークの存在を明らかにした。当教室は、肝臓が、肝臓由来のホルモンいわゆるヘパトカイン(セレノプロテインP:SeP)を分泌し、骨格筋・全身のインスリン抵抗性を形成する可能性を提唱した。 男性において血中SePは糖尿病群で高値であったが、女性において耐糖能別に差を認めなかった。男性において、血中SePは血糖値・グリコアルブミン(r = 0.385, P = 0.021)と正に相関、インスリン分泌能マーカーHOMA-beta(r = -0.495, P = 0.001)、CPI(r = -0.424, P = 0.006)と負に相関した。とりわけ女性において、血中SePは肝インスリン感受性指標である肝糖産生抑制率(r = -0.393, P = 0.047)、MRSから求めた肝細胞内脂肪含量(r = 0.481, P = 0.037)、脂肪組織インスリン感受性指標FFA抑制率(r = -0.444, P = 0.023)と有意に関連することを観察した。男女ともに脂質改善薬スタチン内服者の血中SePは高値であった。男女ともに血中SePは高インスリン正常血糖クランプ検査前後で低下した。 すなわち、男性においてSePは血糖指標を正に相関し、インスリン分泌指標と負に相関した。女性においてSePは肝および脂肪組織インスリン抵抗性、肝細胞内脂肪含量と正に相関した。男女ともにSePは高インスリン血症下で抑制・スタチン内服者のSePは非内服者と比較し高値であった。 SePは、肝臓と脂肪組織のインスリン抵抗性、肝細胞内脂肪含量とくに肝糖産生亢進を反映する臨床指標の可能性がある。SePの作用が性別により異なり、SePの機能を解明することで個々に応じた性差医療に津ながら可能性がある。SePがスタチンによる耐糖能悪化の機序に関連する可能性がある。
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