研究課題/領域番号 |
25860746
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
近藤 基之 滋賀医科大学, 医学部, 客員助教 (60569052)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | オートファジー / 飢餓応答 / ケトン |
研究概要 |
Atg5コンディショナルノックアウトマウス(Atg5flox)の数を増やした後、肝臓特異的Cre発現マウスとAtg5floxマウスを交配し肝臓特異的Atg5欠損マウスを作成。近位尿細管特異的Cre発現マウスとAtg5floxマウスとの交配により近位尿細管特異的Atg5欠損マウスを作成。さらに両臓器でのAtg5欠損マウスを作成し、飢餓における糖新生・ケトン産生に対するオートファジーの役割を検討した。 非絶食時には、対照マウスに比べて各種オートファジー不全マウスに有意な糖脂質代謝変化は認めなかった。一方、36時間絶食時には、肝臓特異的Atg5欠損マウスで有意に血中ケトン濃度が低下した。この現象は腎近位尿細管特異的Atg5欠損マウスでは観察されなかった。また、肝臓特異的Atg5欠損マウスにおけるケトン産生障害は部分的であり、組織標本を用いたOil Red O染色では、肝臓だけでなく腎近位尿細管細胞でもケトン産生源となる脂肪滴が多量に観察された。そこで、Atg5欠損による肝臓でのケトン産生障害が、腎近位尿細管細胞により代償されると考え、肝臓と腎近位尿細管の両方でAtg5遺伝子を欠損する肝腎Atg5ダブル欠損マウスを作製し同様の検討を行った。その結果、肝腎Atg5ダブル欠損マウスでは肝臓特異的Atg5欠損マウスに比べ、絶食時の血中ケトン濃度低下がより高度であった。絶食によるケトン産生の律速酵素であるHMG-CoA synthaseの発現上昇が肝臓だけでなく腎臓でも確認され、腎臓でもケトン産生が行われているとして矛盾しない結果であった。飢餓誘導性オートファジーが絶食時のケトン産生に不可欠な機構であり、腎近位尿細管細胞にもケトン産生能が備わることを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脂肪組織特異的Cre発現マウスの作成を行っているが25年度内に個体数を揃える段階にあり、脂肪組織における検討は進行していないため。
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今後の研究の推進方策 |
肝臓特異的Atg5欠損マウスでの検討:絶食状態での肝脂肪蓄積の程度をOil-red O染色ならびに組織脂肪抽出後のTG濃度測定により検討し、さらに電子顕微鏡にてオートファゴソームと脂肪滴との状態を組織学的に検討する。以上の検討により、絶食時の肝臓におけるオートファジーが肝内脂肪滴から脂肪酸利用によるエネルギー産生に必要であったことを示すことができる。 腎近位尿細管細胞特異的Atg5欠損マウスで検討:絶食開始から絶食48時間後まで、血糖値・血中ケトン濃度の変化を経時的に評価し肝臓同様の定量的評価を行う。絶食時の腎内脂肪(TG)蓄積量の増加、血糖値およびケトン濃度の低下が生じた際には、絶食時の腎近位尿細管細胞におけるオートファジーが腎内脂肪滴から脂肪酸利用による腎糖新生・ケトン産生に不可欠であったことを示すことができる。 脂肪組織特異的Atg5欠損マウスでの検討:絶食開始時から絶食48時間後まで、血清脂肪酸濃度・血糖・ケトン濃度の変化を経時的に評価する。絶食前後の脂肪組織重量の検討も行う。14C標識した脂肪酸をマウスに投与蓄積させ、その後絶食刺激を行い、糖新生に使用された14Cを定量する。脂肪組織特異的Atg5欠損マウスにて絶食時の遊離脂肪酸・ケトン体濃度の低下、脂肪重量の低下抑制、14C標識されたグルコース濃度の低下が確認されれば絶食時の脂肪組織におけるオートファジーが遊離脂肪酸放出その後の糖新生・ケトン産生に必要であったことを示すことができる。 さらに臓器間ネットワークの存在も考えられるため、複数臓器でのオートファジー欠損マウスを作成同様の検討を加えていく予定である。
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