研究課題
本研究では新規糖尿病治療薬開発に向けたEpac2Aの活性化化合物同定を目的としている。平成26年度は主に、平成25年度に施行したスクリーニングによってインスリン分泌促進作用が認められた化合物に関して、Epac2Aに対する活性化効果を検証した。1.候補化合物によるEpac2A活性化効果の検証Epac2Aは低分子量G蛋白質であるRapを活性化することから、化合物刺激によるRap1の活性化を指標にEpac2Aへの作用を確認した。具体的にはマウス膵β細胞株(MIN6)を用い、化合物刺激の有無でGTP 型Rap1 量の比較検討により行った。その結果、一次スクリーニングで得られた15種類の化合物のうち、2化合物でRap1の活性化が認められた。次に、このRap1活性化が直接Epac2Aの活性化を介しているか確認するため、FRET センサーを発現させた膵β細胞株を用いて単一細胞におけるFRET 変化をリアルタイムで観察した。その結果、いずれの化合物処置においてもFRET変化を認めず、Epac2Aに対する直接作用の検出には至らなかった。2.候補化合物に対する化学修飾候補化合物のうち、2種類ではRap1の活性化効果を認めていたが、FRETでは直接的なEpac2A活性化効果は示唆されなかった。しかし、Epac2AのFRET実験は他のFRETプローブと比べて感度が劣ることが知られており、より強い活性化効果を有する化合物を取得する必要があると考えた。さらに、同時に構造活性相関情報の取得も目的とし、Rap1活性化効果を認めた2種類の化合物に種々の化学修飾を加え、100-130種類の新規候補化合物合成を計画した。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度は当初の計画通り研究が遂行可能であった。
今後も当初の研究計画に従って研究を遂行する予定である。1.化学修飾を加えた新規化合物によるEpac2A活性化効果の検証化学修飾を加えた約130種類の化合物に関して、MIN6細胞によりインスリン分泌増強効果を確認する。次に、インスリン分泌増強作用を認めた化合物に関して、Rap1-GTPアッセイおよびFRET実験によりEpac2Aに対する活性化効果を再度検証する。2.in vivoにおけるインスリン分泌増強効果および血糖降下作用の検証インスリン分泌増強効果を認めた化合物を野生型マウスに投与し、経口ブドウ糖負荷試験において耐糖能への影響やインスリン分泌促進作用を検証する。同時にEpac2A欠損マウスに対する効果と比較することで、化合物がEpac2Aを標的とすることを確認する。耐糖能改善効果を認めた化合物に関しては、基本的な薬物動態情報や毒性情報を取得し、薬剤応用への可能性を検証する。
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Cell Reports
巻: 9 ページ: 661-673
10.1016/j.celrep.2014.09.030