研究課題
本研究では新規糖尿病治療薬開発を見据え、インスリン分泌増強効果において重要な役割を担うEpac2Aを標的とした活性化化合物の同定を目的とした。はじめに、Epac2A活性化効果がすでに明らかにされているcAMPやスルホニル尿素薬をクエリーとしたin silico類似構造検索を行い、170種類の候補化合物を入手した。次に、膵β細胞株MIN6を用い、インスリン分泌増強効果を指標に一次スクリーニングを行ったところ、170種類のうち15化合物で高いインスリン分泌増強効果を示した。また、そのうち9化合物は低濃度グルコース条件下では分泌促進作用を示さず、グルコース依存的インスリン分泌増強効果を有することが示唆された。Epac2Aは低分子量G蛋白質であるRap1を活性化することから、Rap1の活性化を指標に化合物のEpac2A活性化効果を検証した。その結果、一次スクリーニングで得られた15種類の候補化合物のうち、1化合物でRap1の活性化効果を認めた。次に化合物に関する構造活性相関の取得を目的に、種々の化学修飾を加えた新規誘導体を計130種類合成し、インスリン分泌増強効果を比較検討した。その結果、カルボン酸修飾を加えた化合物(化合物Xとする)で高いインスリン分泌増強能を認めた。Rap1アッセイにおいても化合物Xは元の化合物よりもさらに強いRap1活性化効果を示した。野生型マウスを用いたOGTTによる検討では、化合物Xの経口投与によりグルコース投与による血糖値上昇が有意に抑制されることが明らかとなり、また低血糖発作も誘発しなかった。さらに、2型糖尿病モデルラットであるGKラットにおいても有意にグルコース負荷後の血糖上昇抑制効果が確認された。化合物Xは新たな糖尿病治療薬開発のリード化合物として有用であることが示唆された。
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Gene
巻: 575 ページ: 577-583
10.1016/j.gene.2015.09.029.