研究実績の概要 |
糖尿病・肥満状態の病態の全容は解明できていない。 C57BL6マウスを高脂肪食(HFD)で飼育すると8週後に肝臓慢性炎症と肝インスリン抵抗性が出現したが、それ以前の負荷4週後の時点で肝臓のeNOS-p (Ser1177)と一酸化窒素(NO)含量が低下していた。RAWマクロファージではNO供与体やcGMPアナログによりLPS依存的なM1化が抑制され、同刺激はAML12肝細胞でもパルミチン酸依存的炎症(IkBα-p)と肝インスリン抵抗性発症を抑制した。eNOS由来NOの欠損したeNOS-/-マウスは普通食飼育にも関わらずKupffer細胞のM1化と肝臓慢性炎症、肝インスリン抵抗性が出現したが、C57BL6マウスにPDE5阻害剤, sildenafilを投与するとHFDに伴うKupffer細胞のM1化と肝インスリン抵抗性が改善した。NO/cGMPの下流分子VASPをRAWマクロファージ、AML12肝細胞で各々過剰発現させるとNO/cGMPと同様に抗炎症、インスリン抵抗性改善作用がみられた。Kupffer細胞の M1化と肝インスリン抵抗性は普通食飼育下のVASP-/-マウスならびに骨髄移植にて樹立した骨髄特異的VASP-/-マウスでも認められた。DETA-NOや8Br-cGMPによる抗炎症作用はVASP-/-腹腔マクロファージで消失し、同刺激による抗炎症作用ならびにインスリン抵抗性改善作用はVASP-/-初代肝細胞でも消失しており、この作用がVASP依存的であることが示唆された。 VASP欠損に伴う慢性炎症とインスリン抵抗性の誘導は肝臓のみならず脂肪組織でも認められた。また骨髄特異的VASP欠損マウスでは普通食飼育にもかかわらず肝臓、脂肪組織マクロファージはTNFαの上昇など慢性炎症の状態を呈し、各々の臓器でインスリン抵抗性(インスリン依存的p-Aktの低下)が認められた。IL-4添加に伴うBMDMのp-STAT6はVASP欠損BMDMでは抑制されており、M2シグナルが抑制される結果、慢性炎症が惹起されるものと考えられた。
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