前年度(25年度)では、Cdkal1-v1は非コードRNAとしてCdkal1活性を制御する可能性が示唆されたため、26年度では、Cdkal1-v1によるCdkal1の制御の分子機構を検討した。具体的には、Cdkal1-v1の5'UTR、ORF及び3'UTRをそれぞれ細胞内に導入し、Cdkal1のタンパク量を検討したところ、3'UTRを細胞に強制発現させたときに、Cdkal1タンパク量の亢進が見られた。 3'UTRは一般的にmiRNAと結合する領域を含むことから、Cdkal1及びCdkal1-v1の3'UTRをさらに詳細に検討したところ、miR494と結合する配列が両者に存在することを発見した。そこで、Cdkal1及びCdkal1-v1の3'UTRをルシフェラーゼ遺伝子の3'側に導入したレポーターを作成し、miR494とともに細胞内に発現させて検討したところ、miR494がルシフェラーゼ活性を有意に抑制した。さらに、miR494と結合するDNA領域に変異を導入したところ、miR494によるルシフェラーゼの活性抑制効果が消失した。さらに、miR494を細胞に強制発現させると、内在性Cdkal1-v1が抑制され、Cdkal1のタンパク量が低下した。一方、miR494に対する阻害オリゴを細胞に導入すると、Cdkal1のタンパク量が亢進した。 以上のことから、ヒトにおいてmiR494がCdkal1の活性制御に重要であることが明らかになった。糖尿病発症リスクを有する患者において、Cdkal1-v1はスプライシング異常により発現量が低下していた。そのため、Cdkal1-v1によるmiR494の抑制がはずれ、miR494が過剰にCdkal1に作用した結果、Cdkal1のタンパク量が低下し、糖尿病の発症が促進されることが明らかになった。
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