研究課題
本研究の目的はグルコースシグナルを介した膵β細胞のストレスシグナルの制御メカニズムを明らかにすることである。膵β細胞においてグルコキナーゼ活性化薬(GKA)により発現変化する分子群の機能を、膵島とマクロファージの共培養系および遺伝子欠損マウスを用いて解析した。その結果、グルコキナーゼを介したグルコースシグナルの活性化は、IRS-2を介した抗アポトーシス効果と、IRS-2に非依存的な小胞体ストレス分子の発現制御との2つの異なる経路により、小胞体ストレス誘導性のアポトーシスを抑制することが示した(Shirakawa J. et al. Diabetes. 2013)。また、インスリン受容体およびIGF-1受容体の特異的な拮抗薬であるOSI-906を用いて、グルコキナーゼを介した膵β細胞増殖促進は膵β細胞のインスリン受容体のリン酸化を介さないことを明らかにした(Shirakawa J. et al. Endocrinology. 2014)。グルコキナーゼの標的分子であるS100A8およびS100A9は、2型糖尿病の膵島炎症発症過程において、マクロファージと膵島の相互作用に重要な役割を果たしていることが示された(Inoue H, Shirakawa J, et al. 投稿中)。同じくグルコキナーゼの標的分子として単離したPdynとFbln5に関して遺伝子欠損マウスを用いた解析を進めている。神経伝達物質のPdynは膵β細胞量制御に関与することが明らかになり、細胞外マトリックス関連分子であるFbln5は膵β細胞での機能だけでなく肝臓でのインスリン抵抗性に関与することを見いだしている(いずれも未発表)。以上より、膵β細胞においてグルコキナーゼを介したシグナルが、膵島炎症や膵β細胞量調節の新たな系路を制御していることが示唆され、さらに膵β細胞におけるグルコキナーゼの標的分子が肝臓におけるインスリン抵抗性を制御する機構も明らかになりつつある。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 5件)
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