研究課題
本研究課題の目的は、β細胞からPPY細胞、PPY細胞からβ細胞など他の膵島細胞への分化転換の可能性を示し、糖尿病発症機構における生理学的意義を解明することであった。1. β細胞からPPY細胞への分化転換の可能性の解明「高血糖で増加したPPY 細胞はβ細胞を由来とする。」2型糖尿病モデルである高脂肪食及びストレプトゾトシンを負荷した (HF+STZ)マウスでは、血糖値が400mg/dL 以上という高血糖をきたし、β細胞が減少する一方、PPY 細胞が増加することを認めた。インスリン遺伝子を発現する細胞を追跡するため、Rat InsulinII promoter-driven Cre (RIP-Cre)とRosa26 promoter-driven GFP (Rosa26R-GFP)両トランスジーンを有する個体にHF+STZ負荷し、血糖値上昇、β細胞減少、PPY 細胞増加が認められる2 型糖尿病マウスを作製した。β細胞系譜追跡により、β細胞由来のPPY 細胞が複数存在し、それらの細胞では特にPdx1 の発現が低下していることを明らかにし、2014年10月 第10回 Diabetes Research Forum in Tokyoで発表した。以上の結果については現在論文準備中である。2. 生理的条件下におけるPPY細胞の細胞系譜の解明PPY 遺伝子発現細胞 (PPY 細胞)の細胞系譜を追跡するため、PPY-Cre; Rosa26R-GFPを用いる。PPY-Cre;Rosa26R-GFP は、PPYpromoter-driven NLS-Cre ノックインマウス (PPY-Cre) とRosa26promoter driven GFP マウス (Rosa26R-GFP)の2 種類のマウスが必要である。本研究課題において申請者は、PPY-Creを作製した。さらに、成体におけるPPY-Cre; Rosa26R-GFP のインスリン、PPY、YFP の発現を観察した結果、膵島内の一部のインスリン陽性細胞がGFP 陽性となり、PPY 遺伝子発現細胞はインスリン遺伝子発現細胞への分化能を有することを確認した。現在、PPY-Cre; Rosa26R-GFPマウスを用いて、胎生期から成体、糖尿病状態におけるPPY細胞の細胞系譜の解析を進めている。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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