研究課題/領域番号 |
25860758
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
小宮 幸次 順天堂大学, 医学部, 助教 (50385077)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 糖尿病 / オートファジー / 膵島アミロイド蛋白 / 膵β細胞 |
研究概要 |
テトラサイクリン誘導性Atg7ノックダウンINS-1細胞を用いて、膵β細胞におけるautophagy不全によるIAPP蓄積を検証するため、以下の実験を行った。まずヒトIAPP発現プラスミドを作成し、HEK293T細胞へのヒトIAPPの導入を行った。quantitive RT-PCRによりHEK293T細胞へのヒトIAPPの導入が確認されたが、WesternBlotting(WB)による蛋白発現の確認ができなかった。いくつかの抗体を試してみたが検出することができず、陽性コントロールであるはずの膵β細胞株のIAPPも検出することができなかった。WBによる検出を断念し、ELISA、免疫染色による検出を検討することとした。次に上記作成したプラスミドのINS-1細胞への導入を試みた。複数の導入方法を試みたが、mRNAレベルにおいてヒトIAPPの発現が認められず、プラスミドを用いた導入は困難であると考えられた。そこでヒトIAPP発現ウイルスを作成しINS-1細胞への導入を試みたが、導入効率と細胞毒性の許容できる条件が得られず、INS-1細胞へのヒトIAPP導入は困難と判断した。そこで既報においてヒトIAPPペプチドをINS-1細胞の培養液中に加えると、ヒトIAPPペプチドがINS-1細胞に取り込まれる事が報告されているため、ヒトIAPPペプチドを投与がINS-1細胞に与える影響についての検討を行うこととした。ヒトIAPPをINS-1細胞に投与し、quantitive RT-CRおよびWBによりIL-1βの発現量の変化を評価したが、有意な差は認められなかった。次に分泌されたヒトIAPPが周囲マクロファージに与える影響を評価するため、マクロファージ細胞株およびマウス腹腔内マクロファージにヒトIAPPを投与し、IL-1βの発現を評価したが、こちらも有意な差は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今までにメカニズムを説明しうるようなデータは得られていないが、当初予定していた平成25年度の研究実施計画における検討項目に関しての検討はすべて行うことができている。 具体的には平成25年度の検討項目としてautophagy不全によるIAPP蓄積の評価とIAPPによる膵β細胞障害のメカニズム解析の一部を予定していた。 autophagy不全による膵β細胞におけるIAPP蓄積の評価に関しては蛋白レベルでのIAPPの評価が困難であり、また当初予定していたテトラサイクリン誘導性Atg7ノックダウンINS-1細胞株へのヒトIAPP導入が困難であった事からIAPP蓄積の評価は現段階では困難と判断した。今後、ELISA、免疫染色を用いてヒトIAPPノックインautophagy不全マウスの単離膵島を用いた検討を考慮する事とした。 メカニズム解析に関してはIL-1βを介した作用を中心に検討を行い、研究実績の概要に示したように有意なデータは得られなかったが、概ね予定していた検証を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
IL-1β関与の検討の追加としてIL-1β中和抗体などでIL-1βを阻害することにより細胞 増殖・アポトーシス・GSISに与える影響を確認しIL-1βの関与の有無をより確定的なものとする。膵島内マクロファージの関与の検討の追加として、ヒトIAPP負荷マクロファージ細胞とautophagy不全INS-1細胞の共培養を行い、細胞増殖、アポトーシス・GSISおよびIL-1β阻害の検討を行い、マクロファージの関与の有無をより確定的なものとする。IL-1βの関与が想定されるようであれば、β細胞特異的オートファジーノックアウト・ヒトIAPPノックインマウスに抗IL-1β中和抗体または受容体阻害剤を投与し、耐糖能の変化を評価しin vivoでの検討も行う。IL-1βの関与が認められない場合には、毒性オリ ゴマーによるミトコンドリア・リソソームの膜障害およびオートファジー不全による障害細胞内小器官のクリアランスの低下による障害ミトコンドリア・リソソームの蓄積を想定し、電子顕微鏡などによるミトコンドリア、リソソーム障害の有無に関して評価し検討を行う。上記にて膵β細胞特異的オートファジーノックアウト・ヒトIAPPノックインマウスにおける耐糖能障害を説明しえない場合には、ヒトIAPPがオートファジーに影響を与 える可能性について検討する。オートファジーはわずかな活性の残存にてその機能を発揮することが示唆されており、ヒトIAPPが残存するオートファジー活性を抑制することで耐糖能障害を増悪させている可能性を検討する。
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