研究実績の概要 |
本研究の目的は、T細胞活性化制御に関与する重要な分子であるPD-1に着目し、劇症1型糖尿病における1)PD-1およびそのリガンドであるPD-L1, PD-L2の遺伝子多型解析、2) 末梢血CD4陽性T細胞におけるPD-1発現の量的検討、を通じて、PD-1系を中心とした遺伝子の関与とPD-1の異常に基づく免疫抑制の破綻を介した劇症1型糖尿病の発症機序を明らかにすることである。 1)PD-1, PD-L1, PD-L2の遺伝子多型解析:劇症1型糖尿病(FT1D)47名、自己免疫性1型糖尿病 (T1AD) 96名、健常対照者(C)32名を対象として、昨年度に行った次世代シーケンサーを用いたPD-L1およびPD-L2遺伝子の詳細な塩基配列の解析結果に基づき、関連解析を行った。その結果、PD-L1およびPD-L2遺伝子領域のうち、計90個の遺伝子多型が同定された。これらのうち、これまでに1型糖尿病との関連が報告されていない2個の多型が確認され、健常対象者に比し劇症1型糖尿病で有意に高頻度であった(p<0.05)(投稿準備中)。 2)CD4陽性T細胞内でのPD-1発現の量的検討: FT1D患者末梢血中のCD4陽性T細胞におけるPD-1陽性細胞率は、2型糖尿病、健常対照者との比較では有意差を認めず、T1AD患者において、他の3群に比し有意に低値であり、さらに、CD4陽性T細胞中のPD-1mRNA発現量は、T1ADにおいて健常対照者に比し有意に低値であった。一方、PD-1 7785C/T多型との関連解析では、C/C群において、C/TおよびT/T群に比しPD-1陽性細胞率が有意に低値であった。しかし、7785C/T多型のallele及びgenotype頻度は、T1AD、FT1D、健常対照者間の比較で有意差はなかった。この結果は、Clin Exp Immunol. 誌に発表した(2015 ;180(3):452-7)。
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