研究課題/領域番号 |
25860761
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
高橋 明格 沖縄科学技術大学院大学, その他の研究科, 研究員 (90637589)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | mRNA 分解 / CCR4-NOT 複合体 / 肥満 / インスリンシグナル |
研究概要 |
肥満は体内に過剰に脂肪が蓄積された状態と定義され、糖尿病・高血圧・高脂肪血症・心疾患等の多くの生活習慣病の危険因子である。mRNA 分解を担う真核生物の主要なpoly(A) 鎖分解酵素 CCR4-NOT 複合体は肥満への関与が示唆される。申請者は、肥満において、CCR4-NOT 複合体が機能する主たる臓器、またその酵素活性の重要性を明らかにするため、酵素活性サブユニット CNOT8 の肝臓特異的欠損マウスが示す肥満抵抗性の解析を進めている。平成25年度において、次世代シークエンサーのデータ解析、ならびに定量的リアルタイムPCR法により、野生型マウスの肝臓で肥満進行時に発現が減少し、また、CNOT8 肝臓特異的欠損マウスの肝臓でその発現が増加している遺伝子をスクリーニングし、Egfr を見いだした。Egfr はシグナル伝達の重要因子であるが、肥満ならびにインスリンシグナルヘの関与はほとんど分かっていない。平成25年度の成果では、実際に高脂肪食負荷条件下、CNOT8 の肝臓特異的欠損マウスの肝臓で野生型に比して増加しているインスリン刺激に応答した Akt のリン酸化は、Egfr の阻害剤の投与により抑制されることを示した。このことから、Egfr の発現上昇がインスリンシグナルを増強する事により、CNOT8 肝臓特異的欠損マウスにおける肥満抵抗性の一因を担っている事を明らかにした。平成26年度は、CNOT8 による Egfr の発現調節機構の詳細を mRNA 分解制御に主に着目し解析を進めて行く。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究により、野生型マウスにおいて Egfrの発現量は肥満進行とともに減少し、CNOT8 肝臓特異的欠損マウスの肝臓でその発現が上昇している事、ならびに、高脂肪食負荷条件下、CNOT8 の肝臓特異的欠損マウスの肝臓で野生型に比して増加しているインスリン刺激に応答した Akt のリン酸化は、Egfr の阻害剤の投与により抑制されることを示した。この結果より、CNOT8 肝臓特異的欠損マウスが示す肥満抵抗性の一因を担う遺伝子として、Egfr の発現上昇を見いだし、肥満進行時の新たな分子機構を明らかにできた。Egfr の肥満進行ならびにインスリンシグナルへの関与に関する論文ほとんどなく、新たな肥満形成メカニズムを提唱できたことは評価できる。今後は、CNOT8 による Egfr の発現制御機構の詳細な分子メカニズムを解明するため、Egfr mRNAの安定性の評価、CNOT8 と Egfr mRNA との結合の確認、Egfr mRNA のpoly(A) 長に CNOT8 が及ぼす影響を評価する必要がある。現在は、これらの予備実験を行い条件検討中である。CNOT8 による Egfr の発現抑制機構の詳細を明らかにする事は、論文作製や医療応用への寄与に重要であり、今後の研究の展開が重要となる。現在までに達成度は、おおむね順調に進展しているとなる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度においては、CNOT8 による Egfr の発現制御機構の詳細な分子メカニズムの解析を中心に研究を進める。このため、野生型と CNOT8 肝臓特異的欠損マウスより初代培養肝細胞を単離し、転写阻害剤 ActD チェイス実験を遂行し、また、RIP ChIP法を用いて、CNOT8 と Egfr mRNA との結合を調べていく。Egfr のpoly(A) 長の評価も RNase H ノザン法を用いて行う。さらに、CNOT8 の脱アデニル化酵素活性自体が肥満に影響を及ぼすかどうか調べるために、CNOT8 の野生型と酵素活性がない変異体をアデノウィルスによりCNOT8 肝臓特異的欠損マウスに戻したときに肥満進行に与える影響を調べる。また、CNOT8 の蛋白質を精製し結晶構造解析を南海大学のMark Baltram 教授との共同研究により進め、CNOT8 の脱アデニル化酵素活性の阻害剤の開発にも取り組み、この阻害剤が肥満進行を阻害できるか調べる。CNOT8 含め CCR4-NOT 複合体の構成因子の肥満症患者に高頻度で出現する SNP の解析も理化学研究所ヒトゲノム医科学研究センター 山本一彦教授との共同研究により行う。これらの研究により、CCR4-NOT 複合体を標的とした新規抗肥満薬の創製・新規肥満診断法の確立を目指す。
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