研究課題
これまで、ヒト骨髄間葉系幹細胞(BM-MSC)の脂肪細胞への分化制御においてGATA2が重要な働きをしていることを示してきたが、骨芽細胞分化への作用についても検討を行った。GATA2特異的siRNAにてGATA2の発現を低下させたBM-MSCを骨芽細胞へ分化誘導し、骨芽細胞分化関連遺伝子の発現量と、形態変化の評価を行った。コントロールと比較してGATA2発現抑制BM-MSCでは、骨芽細胞分化関連遺伝子の発現量の低下と骨芽細胞の減少を認めた。これらのことから、GATA2発現抑制はBM-MSCの骨芽細胞分化に抑制的に作用することが示唆された。BM-MSCは骨髄微小環境における骨芽細胞、脂肪細胞などの間葉系細胞の前駆細胞であるが、近年ではBM-MSC自身の造血細胞への関与が報告されている。このため、BM-MSCにおけるGATA2の発現変化が、その造血支持能に及ぼす影響について、ヒトCD34陽性臍帯血単核球との共培養で検討した。コントロールと比較して、GATA2発現抑制BM-MSCと共培養した細胞で造血幹細胞(HSC)数の減少傾向を認め、コロニーアッセイでは、コントロールと比較してGATA2発現抑制BM-MSCと共培養した細胞においてコロニー形成能の低下を認めた。コロニーの種類においてはコントロールと比較してGATA2発現抑制BM-MSCと共培養した細胞でBFU-Eのコロニー形成能に低下がみられた。この結果から、BM-MSCのGATA2発現低下は骨髄支持能の低下に帰結する可能性が示唆された。これらの結果から、GATA2は造血細胞と造血微小環境の維持に関与している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
これまで、ヒト骨髄間葉系幹細胞(BM-MSC)において、炎症性サイトカインがMSCの脂肪細胞分化を抑制すること、BMP4がGATA2を調節する因子である可能性があること、DNAマイクロアレイを用いた解析において、GATA2制御遺伝子群は細胞周期、発生過程、細胞増殖及び分化などに関与していること、GATA2はCDK/サイクリン系遺伝子を介して細胞周期調節に関わっている可能性があること、GATA2はBM-MSCにおける脂肪細胞分化と骨芽細胞分化制御や骨髄支持能の維持において重要な働きをしている可能性があること示してきた。これらは、GATA2がヒトBM-MSCにおいて分化方向の決定に関与しているとともに、造血細胞と造血微小環境の維持に関与していることを示唆するものと考えられる。
GATA2はヒト骨髄間葉系幹細胞(BM-MSC)における脂肪細胞分化と骨芽細胞分化制御や骨髄支持能の維持において重要な働きをしている可能性があることが分かってきたことから、BM-MSCにおけるGATA2発現異常が造血微小環境へ及ぼしうる影響について、コンディショナルノックアウトマウスを用いてin vivoにて検討する。マウスBM-MSCについて、in vivoでGATA2のノックアウトを行い、造血幹細胞・前駆細胞の量的変化や機能の変化を観察する。具体的には、Cre-loxPシステムを用いて、間葉系幹細胞選択的にGATA2をノックアウトした後に骨髄組織や血液を採取し、末梢血血球数や組織学的な脂肪髄の評価、フローサイトメトリーによる造血幹細胞数やGATA2発現量の評価、コロニーアッセイによる造血支持能の評価などを行う。in vivoにおけるBM-MSC選択的なGATA2ノックアウトに伴う造血細胞および造血環境の変化について検討することによって、これまでの結果がin vivoにおいても同様であるかを明らかにしていく予定である。
物品納品の遅延によって生じたものである。
物品納品に必要な経費として平成27年度請求額とあわせて使用する予定である。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
Haematologica
巻: 99 ページ: 1686-1696
10.3324/haematol.2014.105692