本研究では、「赤芽球の核の偏在化(細胞極性化)は中心体により誘導されて脱核する」との仮説をたてた。平成25年度は、γ-tubulinをマーカーとして中心体の数や局在を明らかにし、阻害剤を用いてダイニンが脱核関連分子であると同定した。平成26年度は、ダイニンの役割についてさらに検討し、脱核時の中心体を4次元的に解析した。 1 微小管には、ダイニンとキネシン2つのモータ蛋白があるため、キネシン関連蛋白Eg5についても検討した。赤芽球培養7日目(Day7: CFU-E)において、Eg5阻害剤は細胞質分裂をしたが、脱核を阻害しなかった。 2 微小管モーター蛋白と中心体関連分子について、免疫ブロット法により各分化段階での発現を経時的に解析した。γ-tubulinとダイニンは脱核時期(day13)まで発現していたが、キネシン関連蛋白Eg5やAurora A、Aurora Bはday13に発現しなくなった。蛍光免疫染色でも同様の結果であり、ダイニンのみが脱核に関与することを支持していた。 3 各種阻害剤投与時の成熟赤芽球の核局在を解析した。ダイニン阻害剤のみが、脱核前の核偏在を抑制した。微小管上でマイナス端方向(すなわち中心体方向)へ向かうダイニン働きが、赤芽球脱核に必要であると考えられた。 4 Day9からday11の成熟赤芽球において、蛍光免疫染色にてγ-tubulinを経時的に観察した。三次元で画像を取得し、その局在を立体的に解析した。Day9赤芽球では、細胞質の中心に核が存在し、核近傍に1個の中心体が存在した。脱核間際のday11赤芽球では核が偏在し、中心体は核近傍、細胞中心側に1個存在した。 本研究を通し、ヒト赤芽球脱核においては、中心体と繋がる微小管のモータ蛋白であるダイニンが重要であることを、初めて明らかにした。
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