long non-coding RNA(lncRNA)を含む網羅的発現解析公開データであるGSE51757を用いて、骨髄異形成症候群(MDS)で発現が低下しているlncRNAの候補として10個、またMDSで発現が亢進しているlncRNAの候補として3個を前年の解析で抽出している。このようなlncRNAの中で、MDSで発現が特に亢進しており正常細胞との差が大きかったCRNDEに着目した。CRNDEは大腸がん細胞で発現が亢進していることが知られているlncRNAで、腫瘍細胞の代謝に影響し、好気的解糖を促進することが知られている。マウスCRNDEのsiRNAを発現するレトロウイルスベクターを2種類作成し、マウス造血器腫瘍のin vitroモデルであるEvi1強制発現不死化細胞,MLL-ENL強制発現不死化細胞にそれぞれレトロウイルスで導入し、CRNDEの発現をノックダウンした。2種類のベクターがそれぞれCRNDEの発現を約30%に低減することを確認した。この細胞をin vitroで培養し対照との細胞増殖を比較したが有意差は得られなかった。従って、この系からはCRNDEの造血器腫瘍細胞の生存・増殖における重要性を示すことができなかった。その後、正常核型のde novo急性骨髄性白血病症例で発現量が予後と相関するlncRNAが網羅的解析によって多数報告された(PNAS 2014;111:18679)。これらの白血病の病態における意義を解析するため、高発現で予後不良となる7種のlncRNAについて、その発現をノックアウトすることの可能なCRISPR/Cas9を発現するレトロウイルスベクターを構築した。
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