研究課題/領域番号 |
25860793
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
阿部 朋行 自治医科大学, 医学部, 助教 (20610364)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 再生医学 / 幹細胞 / トランスレーショナルリサーチ / 移植・再生医療 / 応用動物 |
研究概要 |
本研究では、ヒトリンパ球の投与によってヒツジの造血系を抑制し、ヒトiPS細胞由来の造血幹細胞の増幅・分化を促進する技術を開発する。平成25年度は、以下の検討を行なった。 ① ヒトリンパ球投与量の検討と造血抑制効果の検証:2-5 x10e7 cells/kg量のヒトリンパ球をヒツジ静脈内に投与した。その結果、5x10e7 cells/kgのヒトリンパ球を投与後、一過性の造血抑制効果が認められた。また、投与後1年以上にわたって、移植片対宿主病(GvHD)の発症が認められた。マウス/ヒト間のGvHD発症モデル実験では、ヒトリンパ球が放出するIFN-γなどの液性因子によってGvHDが引き起こされるということが報告されている(Hippen KL et al., Blood 2012)。このことから、ヒツジに投与されたヒトリンパ球は、液性因子の放出によってヒツジ体内に生着したヒト造血幹細胞の増殖・分化を促進することが予想される。以上より、5x10e7 cells/kgのヒトリンパ球をヒツジに投与することで、一過性の造血抑制効果ならびにGvHDを誘導することが出来た。 ② 成人リンパ球由来のiPS細胞の樹立:山中4因子を搭載したセンダイウイルスベクターを使って、成人リンパ球からiPS細胞を樹立した。すでに、三胚葉分化能を有することや未分化マーカーを発現することを確認し、以前申請者らの報告したサルES細胞の造血分化誘導法(Sasaki et al., Transplantation 2005)によって造血細胞マーカーが発現することを確認した。 ③ 臍帯血造血幹細胞を生着したキメラヒツジへのヒトリンパ球投与・作用機序の検証:臍帯血中の造血幹細胞を用いて作出したキメラヒツジに対し、同じドナー由来のリンパ球を投与した。その結果、ヒツジ骨髄中のヒト造血キメラ率を、一時的に向上させることに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
陽性対照区の位置づけである臍帯血造血幹細胞を用いて、予定通り、すでにヒトリンパ球投与によるヒト造血キメラ率の向上に成功している。また、ヒトiPS細胞を用いて、キメラヒツジの作出実験を進行中(細胞は移植済み)であり、現在は娩出待機中である。これと同時に、リンパ球投与によるヒト造血の促進メカニズムの解析についても、計画通りにキメラヒツジ血液成分の解析を進行中である。以上のことから、本研究は、当初の計画通りに進行中である。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続いて「臍帯血造血幹細胞を生着したキメラヒツジへのヒトリンパ球投与・作用機序の検証」を実施する。さらに、平成26年度は、「ヒトiPS細胞のin vivo分化誘導とヒトリンパ球の投与効果の検証」を実施する。 ・ヒトリンパ球投与による増強効果のメカニズムの検証:キメラヒツジにヒトリンパ球を投与した後、継続的に採取していった末梢血および骨髄を用い、造血幹細胞の分化・増殖をコントロールするヒトサイトカインの検出・定量を行なう。代表例として、ヒトリンパ球が放出する液性因子であるIFN-γがあり、近年、造血前駆細胞の増幅に関与するという報告がある(Schürch CM et al., Cell Stem Cell 2014)。平成26年度は、ヒトリンパ球を投与することで一過性にヒト造血キメラ率の向上に成功したヒツジ血液の分析を実施する。 ・ヒトiPS細胞由来造血キメラヒツジの作出と造血幹細胞の機能性の検証:成人リンパ球由来iPS細胞を生着したヒツジにヒトリンパ球を投与する。ヒトiPS細胞由来造血幹細胞を生着したキメラヒツジの作出は、申請者らのグループがサルES細胞で行った方法と同様に実施する(Sasaki et al., Transplantation 2005)。また、ヒトiPS細胞由来の造血幹細胞の機能性を、以下の2つの方法で検証する。1つ目は、キメラヒツジ末梢血・骨髄においてヒト造血が長期にわたって生着するかどうか検証する。2つ目は、キメラヒツジ骨髄内からヒトCD34陽性細胞(ヒトiPS細胞由来の造血幹細胞が含まれる細胞群)を分離し、免疫不全マウスへ移植する。その後、免疫不全マウスの末梢血・骨髄内でヒト赤血球系(CD235陽性細胞群)、白血球系(CD45陽性細胞群)および血小板系(CD42b陽性細胞群)を検出できるか蛍光抗体法で解析する。
|