研究課題
慢性骨髄性白血病(CML)の治療において、チロシンキナーゼ阻害剤(TKIs)は、その予後を劇的に改善した。しかしながら、bcr-ablが検出感度以下まで減少した分子遺伝学的大寛解(MMR)症例ですら、TKIs内服中止によりその多くが再発してくることから、TKIs抵抗性のCML幹細胞を標的とした新たな治療薬の開発が求められている。申請者らは、生体内の未分化なCML細胞特異的に発現する分子(CD120a, CD225, CD284)を同定した。本研究では、これらの分子のCML幹細胞マーカーとしての有用性を検証し、新たな微小残存病変(MRD)の評価法や抗体治療薬など臨床応用へと展開するための基盤を確立することを目的とする。昨年度までに、上記未分化CML細胞特異抗原について、CML幹細胞マーカーとしての有用性を検証するとともに、これらが細胞内の機能分子として作用している可能性を見出した。本年度は、計22例における骨髄有核細胞中のCD34+38-かつCD225+120a+細胞(CML幹細胞)の頻度を継時的に解析した。いずれの症例においても治療に伴いその頻度は減少したが、MMR到達後もある一定の頻度を保ったまま推移する症例も認めた。また、TKI治療中のCML幹細胞におけるbcr-ablの発現量の変化をsingle cell レベルで解析した結果、全ての症例でMMR時には初発時の1/10程度に低下していた。しかしながら、症例によっては、初発時の平均以上のbcr-ablを発現する細胞を認めた。したがって、臨床上同じ寛解状態を得ている症例においても、CML幹細胞の状態はかなり異なると考えられた。現在、CML幹細胞の特性の違いがどのような臨床的な意義を有するかについて解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度の計画として、我々が同定した未分化CML細胞特異抗原を用いたMRDの評価系の確立を予定していた。多数例での検討によりその有用性が確認できたとともに、bcr-ablの発現量に関して新たな知見を見出すことができた。ほぼ計画通りに研究を遂行できていると考えられる。
平成27年度は、未分化CML細胞特異抗原を標的とした新規治療薬の開発を中心に解析を行う。具体的には、各CML特異抗原に対する中和抗体を作成し、CML治癒を目指す治療薬として有効であるかどうかをマウスの移植実験にて解析する。
本年度分は、主に試薬の購入に充当する費用としていたが、予定よりも少額に収まった為、次年度に繰り越すとした。
次年度以降の遺伝子、タンパクの発現解析などに必要な試薬、細胞をFACSで単離するための抗体、実験動物等に研究費を使用する予定である。また国内、国外の学会における旅費、論文投稿料にも使用する予定である。
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血液内科
巻: 68 ページ: 399-404
臨床腫瘍プラクティス
巻: 10 ページ: 43-48