研究実績の概要 |
本研究では、CML根絶に向けた取り組みとして、TKI抵抗性のCML幹細胞を同定し、治療抵抗性に関わる機序等を解明することを目的とする。昨年までに、single cell レベルで網羅的な表面抗原の発現解析を行い、TKI投与中に残存する未分化なCML細胞特異的に発現する分子としてCD120a, CD225, CD294, CD320を同定した。 本年度は、未分化CML細胞特異抗原陽性細胞の特性解析を中心に行った。未分化CML細胞におけるbcr-ablの発現量をsingle cellで解析した結果、大部分が治療前と比較してMMR到達時には約1/10程度に減少していたが、初発時と同定度の発現を認める症例や、bcr-ablだけでなく内部コントロールablの検出されない症例が認められた。後者に関し、ablの発現に作用するmiRNAの発現変化を解析した結果、mir203, 30a, 27b, 10aの発現が初発時には未分化CML細胞特異的に抑制され、寛解期に回復していた。さらに、各miRNAのプロモーター領域のメチル化状態をTKI投与前後で比較した結果、ablが検出できた症例、できなかった症例いずれも、初発時にはmir203のプロモーターはメチル化されていたのに対し、MMR時では、ablを検出できなかった症例でのみ脱メチル化されていた。以上の結果、臨床上同じ寛解状態を得ている症例においても、CML幹細胞の状態はかなり異なると考えられた。今後は、初発時、およびTKIs投与により寛解を得た骨髄サンプルから、CD225等の特異抗原陽性の細胞を分離し、FISH法による染色体レベルでのBCR-ABLの発現率、遺伝子レベルでのBCR-ABLの発現率を評価すし、各々単独、あるいは複数を組み合わせた場合の感度、特異度を算出することでMRDを評価する必要があると考えられた。
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