研究課題/領域番号 |
25860798
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
倉光 球 国立感染症研究所, その他部局等, 研究員 (00566383)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | リボソームタンパク質 / 貧血 / 遺伝子変異 / タンパク質代謝 |
研究概要 |
これまでDiamond Blackfan貧血(以下DBA)の赤芽球分化異常メカニズムについて培養細胞やヒトCD34+造血前駆細胞を使ったin vitro培養モデルで解析してきた。In vitroでの解析結果がどの程度患者の状態を反映したものかを調べるには、患者の骨髄CD34+細胞の赤芽球分化解析について解析することが必須であるが、極めて稀少な疾患であることから研究用に患者検体の入手することは困難を極め、最終的な結論は不明のままであった。そこで本研究では患者の末梢血からiPS細胞を樹立し、in vitroで無限に増殖可能な疾患iPS細胞を用いた解析システムの構築を第1に目指した。 これまでにDBA患者の遺伝子変異解析等を通じてDBA患者・医師との研究協力体制を構築し、熊本大学発生医学研究所の協力を得て、平成25年度末までに4例のDBA患者からセンダイウイルスを用いて疾患iPS細胞の樹立に成功した。よって平成25年度はiPS細胞からの赤芽球分化系を用いて、患者の遺伝的背景を加味したDBAの発症メカニズム解析の検討を開始することが出来た。特にDBA患者iPS細胞と正常iPS細胞の血球分化との差異についてCD71発現等を指標にin vitroで詳細な解析を推進中である。またこれまでに培養細胞やCD34+造血前駆細胞でのDBAのin vitro培養モデルで、DBA原因遺伝子のRPS19をshRNAで抑制すると細胞内のタンパク質代謝活性に大きな変化が起きることを見い出しており、特にオートファジー活性化を伴うリソソーム分解系のタンパク質代謝活性化とDBAの発症機構との関わりについて焦点を絞り、DBA疾患iPS細胞を用いた解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究計画では、DBA疾患iPS細胞からのin vitro赤芽球分化誘導解析を進めることとしていた。期間内に熊本大学発生医学研究所からのDBA iPS細胞を受け入れ、ヒトiPS細胞の培養技術を習得し、培養を開始することができた。また当初の計画の通り、DBA疾患iPS細胞のin vitroで赤芽球分化誘導の解析系の構築に取り組み、赤芽球分化に関わる複数の細胞表面マーカーをターゲットとし、野生型iPS細胞および疾患iPS細胞の分化誘導後の分化マーカーの変化について経時的解析を進め、発症に関連すると考えられる分化のポイントを探索し、発症メカニズム解析を進めている。 さらに引き続きDBA患者からのiPS細胞の作製を取り組みを続けており、平成25年度末で1症例のDBA iPS細胞株を追加することができた。 これらのことから、交付申請時の計画を概ね順調に進めることが出来ていると判断できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画に関する交付申請書の計画・方法に従い、DBAの赤芽球分化抑制メカニズムについて疾患iPS細胞を用いて解析を進める。具体的には、DBA疾患iPS細胞からの赤芽球前駆細胞の誘導とタンパク質代謝活性の関係の解析を進める。 以下のように、①細胞内タンパク質代謝系の解析:細胞内タンパク質分解の活性についてオートファジーを一つの指標にしLC-3の発現と局在をIF法やWB法で解析する。②タンパク質代謝と赤芽球分化特異的分子の発現の関係の解析を進める。申請者はRPS19のshRNA発現によりK562でCD71等の赤芽球特異的分子の発現が減少することをFACSおよびWBで見出しており、この点についても重点的に疾患iPS細胞で解析を試みる。また、分化誘導された赤芽球前駆細胞のCD71など赤芽球分化に重要な因子群のターンオーバーとタンパク質の分解系の活性化がどのように関与するか経時的に解析する予定である。特にリソソーム阻害剤E64d, PepstatinAやタンパク質合成阻害剤シクロヘキシミドでタンパク質分解あるいは合成を停止させた場合に、CD71等のタンパク質発現量がどのように変化するかウエスタンブロット法やフローサイトメーターで観察し、DBA患者由来細胞においてこれら分子が合成レベルと分解レベルでどのように発現調節されているか明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究期間の平成26年の3月時点において、培養細胞を使用して経時的にサンプリングを繰り返していたため、状況によっては大至急で研究試薬を購入する必要があった。よって研究の進捗状況によって最低限度必要になる使用額を次年度使用額として未使用にし、年度変更のタイミングによって研究の進捗が阻害されないよう対策をこうじた。 平成26年度のはじめに次年度使用額の約2千円分について、細胞培養培地を購入し使用する予定。
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