本研究では、日本人の静脈血栓症患者に同定された線溶因子プラスミノーゲン栃木変異(A620T変異)に相当するプラスミノーゲン-A622T変異のホモ接合体マウスを用いて、本変異と血栓性リスクについて解析した。本変異マウスは、線溶能低下を引き起こしたが、皮膚創傷治癒過程の組織線溶能は低下しなかった。また、局所脳虚血再還流モデル実験、組織因子静注による急性肺塞栓誘発モデル実験及び電気刺激誘発深部静脈血栓症モデル実験では、本変異による動静脈内での血栓形成の亢進は認められなかった。日本人に高頻度に見られる本変異は、線溶能を低下させるが、単独の変異では動静脈血栓塞栓症の増悪要因とはならないことが判明した。
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