研究課題
若手研究(B)
我々の研究室(以下当研究室)では、マウス新規制御性T細胞(Treg)としてLAG3+Tregを同定した。LAG3+Tregは転写因子Egr-2を特徴的に発現し、炎症性腸疾患やループス腎炎のモデルで治療効果を発揮する。我々は、ヒト扁桃の解析からLAG3+Tregがヒトでも存在することを明らかとした。ヒトLAG3+Tregは、IL-10を高産生し、濾胞性ヘルパーT細胞によるB細胞活性化と抗体産生を試験管内で抑制することが明らかとなった。また、本細胞群はヒト化マウスの移植片対宿主病(GVHD)を生体内で抑制した。その作用機序については、細胞接触因子が重要であることを明らかにし、阻害抗体の実験から、PD-L1/PD-1系が重要であることが明らかとなった。続いて我々は、ヒトLAG3+Tregを末梢血でも同定し、扁桃のLAG3+Tregと同様の性質をもつことを明らかにした。そして我々は、ヒトLAG3+Tregが、自己免疫性疾患患者の末梢血中で健常人より有意に減少していることを明らかにし、LAG3+Tregは自己免疫疾患を抑制する細胞集団と考えられた。今後は、本細胞群がB細胞の抗体産生をいかに抑制するかを明らかにすることに注力する方針としている。また、本細胞集団の試験管内・生体内での誘導条件を各種サイトカインや薬剤により検討し、本細胞を誘導し自己免疫疾患の治療に役立つ可能性を模索する方針である。
2: おおむね順調に進展している
まず我々は、マウスLAG3+Tregを制御する転写因子Egr2と同じファミリーにあるEgr3についての解析を行い、本転写因子を大量に認める分画は、ヒト扁桃においてLAG3+Tregとは異なる分画に認めることを明らかとした(J Immunol. 2013;191:2351)。我々はこの解析の過程で、ヒト扁桃にLAG3+T細胞が存在することを発見し、遺伝子発現プロファイルもマウスLAG3+Tregと相同性が高いことを明らかとした。そして、本細胞はIL-10を高産生し、濾胞性ヘルパーT細胞によるB細胞活性化と抗体産生を試験管内で抑制することを明らかにした。また、ヒト化マウスの移植片対宿主病(GVHD)を生体内で抑えることも明らかとした。その作用機序については、細胞接触因子が重要であり、また阻害抗体の実験から、PD-L1/PD-1系が重要であることを明らかとし、その成果を学会発表した(2013年12月11日第42回日本免疫学会)。現在その研究成果について論文投稿中である。我々は、ヒトLAG3+Tregを末梢血でも同定し、IL-10産生を高産生し、B細胞の抗体産生抑制能があることを明らかにした。また、ヒトLAG3+TregはT細胞に対する制御性活性は非常に弱いことが明らかとなった。そして我々は、関節リウマチ患者と健常人の末梢血を解析し、関節リウマチ患者では本分画が減少していることを明らかにし、その成果について学会発表した(2014年4月26日第58回日本リウマチ学会学術集会)。
我々は、ヒトLAG3+Tregを扁桃・末梢血で同定し、基本的な機能解析と作用機序について明らかにしてきた。また、自己免疫疾患患者での解析を開始している。我々は、その解析を更に進める予定である。本細胞群の、TCR刺激後のサイトカイン産生や遺伝子発現について、サスペンションアレイ・細胞内染色・ELISA・定量的PCRを行い、実際に抗原に遭遇した段階での性質を解析する。ヒトにおける抗体産生抑制にPD-L1とFasが独立して寄与していた場合には、B細胞上のPD-1とFasLを同時に刺激することで、強力な抗体産生抑制効果を得る新たな治療法となる可能性がある。そこでB細胞をIL-6, IL-21, 抗CD40抗体で刺激することで抗体産生を誘導する実験系において(PNAS.2011;108:3701)、PD-L1-FcとFas-Fcを様々な濃度の組み合わせで加えて、抗体産生抑制がみられるか検討する。また、本細胞集団の生体内における影響を実験するために、免疫不全NOGマウスを用いてヒトLAG3+Tregが欠損した状態や過剰な環境を作成し、生体内の免疫環境への影響を解析する。ヒトLAG3+Tregが抗体産生抑制に強力な作用を持つことが明らかになった場合、本細胞を誘導することで、自己免疫疾患の治療に役立つ可能性が考えられる。そのため、本細胞の試験管内・生体内での誘導条件を各種サイトカインや薬剤により検索することとしている。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
The Journal of Immunology
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