免疫染色では血管炎患者由来皮膚組織でATX、LPA1の発現が健常者より亢進し血管炎の病態にATX-LPA-LPA1 cascadeの関与が示唆された。次にCandida albicans water-solbule fraction (CAWS)誘導血管炎モデルマウスを用いて解析を進めた。ヒト血管炎同様にCAWS誘導血管炎モデルマウスの血管炎部位で免疫染色ではATX、LPA1が高発現し、Real time RT-PCRではLPA受容体の中でLPA1が最も高発現していた。CAWS誘導血管炎モデルマウスへLPA1阻害薬を投与すると濃度依存性に血管炎の抑制効果が見られた。好中球除去によりCAWS誘導血管炎の発症が抑制され、好中球が本モデル病態の主体である事を先に我々は報告している。そこでin vitroで好中球におけるLPA-LPA1 signalの作用を解析した。マウス脾臓から採取した好中球をLPAで刺激したがエラスターゼ、活性酸素の産生は亢進されず、neutrophil extracellular traps (NETs)の形成促進にも影響は与えなかった。しかし、ケモタキシスチェンバーを用いたマウス好中球に対するLPAの遊走作用を解析した結果、濃度依存性にLPAは好中球に対する遊走促進を認め、LPA1阻害薬で前処理をされた好中球ではLPAの遊走作用が抑制された。蛍光標識した好中球をLPA1阻害薬投与群と非投与群のCAWS誘導血管炎モデルマウスに移入し、24時間後に血管炎部位へ浸潤した蛍光標識した好中球を蛍光顕微鏡下に解析した。LPA1阻害薬非投与群と比べて投与群では好中球の浸潤が抑制された。以上からATX-LPA-LPA1 cascadeは好中球の遊走促進を介し、血管炎の病態形成へ関与する事が明らかになった。更にLPA1は血管炎に対する新規治療標的となり得ることが示唆された。
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