研究概要 |
抗MDA5(CADM-140)抗体陽性皮膚筋炎例の免疫病理組織学的検討については、同抗体陽性例の1剖検例より病変の主座である肺組織より病理標本を作製した。CD8陽性細胞が肺胞空内に浸潤していた一方、CD4陽性細胞はほとんど認めなかった。CD56陽性細胞も認めなかった。しかしCD68陽性細胞は肺胞空内に浸潤していた。IP-10(CXCL10)は正常肺部分には認めず、炎症後のつぶれた肺胞・線維化部に染色された。MDA5陽性細胞は明らかではなかった。これらのことは、抗MDA5抗体陽性例の肺病変局所においてマクロファージの活性化とそれを刺激する因子が存在することを示唆するものであった。 抗MDA5抗体陽性例と陰性皮膚筋炎例における遺伝学的背景についての検討では20例の抗MDA5抗体陽性例についてHLA class I (A, B, and C) と class II (DRB1, DQA1, DQB1, and DPB1)のジェノタイピングをWAKFlowシステムを用いて行った。コントロールとしての日本人健常人のHLAの各タイプの頻度はHLA研究所のウェブサイト(http://www.hla.or.jp/)より情報を得た。HLA classIについては抗MDA5抗体との有意な相関を認めなかったが、HLA classIIに関してはHLA DRB1*13:02-DQB1*06:04 -DQB1*06:04のハプロタイプの頻度が抗MDA5抗体陽性例において健常人よりも有意に高かった(12.6% v.s. 3.6% ; P = 0.0030, OR:3.79 (95%Cl 1.47-9.76))。今後さらなる症例の集積とともに検証が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
抗MDA5抗体陽性例の治療前末梢血リンパ球に対する各種pattern recognition receptors(PRRs)刺激因子(LPS, HKLM, PolyI:C, FSL1, Zymosan)による刺激実験とともに、抗MDA5抗体自身の病原性・病因性の可能性として抗MDA5抗体による抗MDA5抗体陽性例の治療前末梢血リンパ球や健常人末梢血リンパ球に対する刺激実験を行う。
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