研究課題
若手研究(B)
ゲノム解析として、167人の高安動脈炎患者DNAと663人の健常人DNAを用いて、一塩基多型(SNP)に注目したイルミナ社のインフィニウムアレイ(Human Exomeアレイ)にてゲノムスキャンを行った。その結果、HLA領域に加え、染色体5番のIL12B領域に強い関連を認めた(p=1.8x10-7)。また、ゲノムスキャンの結果を212人の患者DNAと1,322人の健常者DNAを用いて追認解析を行った結果、HLA領域、IL12B領域に加え、染色体17番のMLX領域の関連を確認した。さらに、IL12B領域の多型は大動脈弁閉鎖不全症の合併頻度やその重症度、また、疾患活動性指標として用いられるCRPの時間平均と関連を示した。さらに、高安動脈炎の疾患感受性に対し、既知のHLA-B*52:01と相互作用を示すことが分かった。これらは、高安動脈炎の病態に、IL12Bが中心的な役割を果たすことを強く示唆するものである。また、IL12BがコードするIL12p40を標的とした生物学的製剤であるウステキヌマブは、同じくIL12B領域が関連する炎症性腸疾患や尋常性乾癬に用いられ効果を発揮しており、ウステキヌマブが高安動脈炎の新規治療薬年の可能性が示唆された。これらの結果をAmerican Journal of Human Genetics誌に発表した。現在、さらに稠密なアレイを用いたさらに検体を増やした解析を行っている。また、HLA-Bアレルのタイピングを行い、HLA-B*67:01が高安動脈炎に関わっていることを発見し、Rheumatology誌に発表した。転写物解析のために、初診患者含む15例のRNAを収集した。代謝物解析のために、初診患者含む200例の血漿を収集した。
1: 当初の計画以上に進展している
複合性疾患において過去の経験から遺伝子解析のみでは有望な治療ターゲットを得るのは難しいと考えて複合的な解析を提案したが、遺伝子解析で大変有望な治療ターゲット分子を同定でき、さらにその分子に対する抗体製剤が利用可能であるから。
さらにDNA検体を集積し、ゲノム解析を進める予定である。現在、共同研究施設と合わせて500例以上のDNA検体を解析可能であり、245例のDNAを稠密なアレイで解析済みであり、有望な結果を得ている。これらの結果を追認解析を行い、多型の機能解析も行う予定である。また、RNAを発現アレイを用いて解析する予定である。発現アレイは大変高価であるが、可能な数を解析予定である。対照群のデータは揃っており、対照群と同じ手法でRNA抽出及びアレイによる測定を行う予定である。また、現段階で保有している血漿を用いて代謝物の測定を進め、高安動脈炎特徴的な変動がないかを解析予定である。
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American Journal of Human Genetics
巻: 93(2) ページ: 289-97
10.1016/j.ajhg.2013.05.024.
Rheumatology (Oxford).
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