研究課題
高安動脈炎においては、炎症性腸疾患の一つである潰瘍性大腸炎との合併が時に見られるが、これまでの報告は症例報告や数例の報告に限られており、大規模な研究はなされたことがなかったため、ゲノム関連解析で培ったネットワークを生かして解析を行った。14施設から合計470症例のデータを蓄積した結果、6.4%(95%信頼区間:4.3%-9.0%)の患者に潰瘍性大腸炎の合併が見られた。これは、潰瘍性大腸炎の有病率をはるかに上回るものである。さらに、合併例の臨床的特徴を解析した結果、合併例は有意に高安動脈炎を若年発症することが分かった。一方で、脳梗塞・心筋梗塞や大動脈弁閉鎖不全症と言った重篤な合併症の発生には明らかな差を認めなかった。遺伝的な解析で、HLA-B*52:01はオッズ比12.14(95%信頼区間:2.96-107.23)と強く潰瘍性大腸炎の合併に関連していた。また、非合併例の高安動脈炎データを用いて、高安動脈炎と潰瘍性大腸炎の間に遺伝的な重複が大きいことを示した。これらの結果は、高安動脈炎と潰瘍性大腸炎の病態が非常に似ていることを示唆するものである。これらの研究成果はArthritis and Rheumatology誌に発表予定である。ウステキヌマブは炎症性腸疾患と高安動脈炎、さらに乾癬の疾患感受性遺伝子であるIL12BがコードするIL12p40タンパクに対する抗体製剤であり、炎症性腸疾患(主にクローン病)と乾癬の治療に用いられている。IL12Bが高安動脈炎において中心的な役割を果たし、高安動脈炎と炎症性腸疾患の病態が近いことから、ウステキヌマブが高安動脈炎に有効であると考え、3例の難治例に対しウステキヌマブを投与する臨床試験を行い、良好な結果を得た。また、高安動脈炎の病態解明のため、8例の患者の末梢血からRNAを抽出し、発現アレイにて遺伝子発現を定量した。
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Arthritis and Rheumatology
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