研究課題/領域番号 |
25860813
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
北畠 正大 熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (60457588)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 自己免疫疾患 |
研究概要 |
全身性自己免疫疾患の患者では自己抗体が産生され、組織傷害を引き起こす。このような自己抗体の多くは自己抗原に対する高親和性を持つIgGクラスの抗体である。腹腔B1a細胞は自己抗原との交差反応性を持つIgMクラスの自然抗体を産生すること、自己免疫疾患モデルマウスで異常増殖が認められることから、高親和性自己抗体産生細胞の前駆細胞であると考えられている。B1a細胞が高親和性自己抗体産生細胞に分化するためには、B1a細胞の活性化、異常増殖、抗原受容体の体細胞突然変異による高親和性の獲得、クラススイッチが必要であり、腹腔内や二次リンパ組織等の微小環境における相互作用が重要な役割を担っていると考えられるが、その詳細は明らかとなっていない。申請者はセリン・スレオニン脱リン酸化酵素PP2Aの制御性サブユニットG5PRが抗原受容体シグナルの調節により、自己反応性B細胞クローンの排除に影響を与えること、G5PRの過剰発現はB1a細胞の異常増殖、自己免疫疾患を引き起こすことを明らかにしている。また、抑制性Fcγ受容体FcγRIIBは細胞内領域にITIMを持ち、IgGとの結合によりB細胞やマクロファージの活性化シグナルを抑制する分子であり、マウスやヒトの自己免疫疾患発症との関連が報告されている。本研究ではこれらのシグナル伝達の調節異常が与える自己免疫疾患発症への影響を明らかにする事を目的としている。本年度は腹腔B1a細胞が胚中心を模したin vitroの環境下で増殖し、胚中心様B細胞に分化すること、抗原受容体がIgGへクラススイッチを起こすこと、抗体産生細胞へと分化することを明らかにした。また、G5PRを過剰発現したB1a細胞は抗体産生細胞への分化が促進され、自己抗体の産生が増加することが明らかとなり、G5PRによるシグナル伝達の制御異常が自己抗体産生細胞への分化と関連する事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでB1a細胞がどのような環境下でクラススイッチや体細胞突然変異を引き起こすし、抗体産生細胞へと分化するかは明らかとなっていなかった。本年度の研究により、B1a細胞がin vitroの胚中心様環境下で増殖し、クラススイッチや抗体産生細胞への分化を引き起こすことができることが明らかにした。また、G5PRがクラススイッチと抗体産生細胞への分化のバランスを調節していることを示した。これらの成果はB1a細胞から高親和性自己抗体産生細胞への分化の制御機構の一端を明らかにしたものであり、研究が順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析からG5PRの過剰発現はBCRを介したJNKの活性化を抑制することが明らかとなっていることから、JNKシグナル伝達がB1a細胞から抗体産生細胞への分化に与える影響を明らかにする。自己免疫疾患モデルマウスのB1a細胞にも同様の異常が認められるかについて検討する。また、FcγRIIB欠損マウスのB細胞およびマクロファージにおける異常についても詳細な検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
英語論文発表のための英文校閲、投稿料、掲載料として30万円を予定していたが、論文の投稿までには至らなかったため。 英語論文発表のための英文校閲、投稿料、掲載料として未使用額を利用する予定である。
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