研究実績の概要 |
全身性エリテマトーデス(SLE)患者46名、疾患コントロールである関節リウマチ(RA)患者40名および健常人コントロール25名より、末梢血単核球を採取し、RNAを抽出し、cDNAを作成し、Fli-1、Ets-1およびI型インターフェロン産生に深く関わる分子であるIRF5、IRF7、IFIH1、TYK2の発現をrealtime PCRを用いて計測した。当初の予測に反し、Fli-1はSLE群において他群より有意に発現が低値であった。また、Ets-1はSLE群とRA群では健常人群と比較して発現が有意に低値であった。IRF5, TYK2はSLE群とRA群で低値、IRF7, IFIH1はRA群で低値であった。Fli-1はIRF7とIFIH1との間に正の相関、Ets-1はIRF5、IRF7とIFIH1との間に正の相関が認められた。 次に、末梢血単核球のB細胞/T細胞比およびCD4T細胞/CD8T細胞比を比較したが、いずれにおいてもSLE群で有意に低値であった。白血球に占める形質細胞様樹状細胞および樹状細胞の割合に関してはは群間で差が認められなかった。SLE群においてはEts-1とCD4/CD8比に正の相関が認められた。 臨床検査値とSLE患者のFli-1、Ets-1の検討では、C3、C4およびds-DNA抗体とは有意な相関は認められなかった。疾患活動性を示すSLEDAI-2Kとの相関も認められなかった。ステロイド使用量が多い程、有意ではないもののFli-1、Ets-1とも低値を示す傾向がみられた。 今回の検討ではSLEでFli-1とEts-1の発現量が健常人と比べ低い事、Fli-1、Ets-1とIFN発現に関係する分子でいくつかの関連を示す事ができたが、その機序、末梢血の細胞比や臨床検査値との関連に関しては結論を出すことがきなかった。今回集積したSLE症例は、既に治療が開始され病勢がコントロールされている症例が多かったため、今後は、治療前の症例を集積し検討を勧めたい。また、RAにおける病態の意義も検討したい。
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