研究課題
関節リウマチ(RA)、変形性関節症(OA)では、既存治療に抵抗性で関節破壊が進行する患者が多く存在するが、破壊された関節を修復する治療法は確立されていない。我々は骨・軟骨への分化能を有する間葉系幹細胞(MSC)が関節再生に有用と考え、MSC治療の確立に向けた研究を行っている。MSCは免疫抑制能を有すること等が知られ、一部の疾患で経静脈投与(IV)の有効性が報告されているが、IVは関節再生の観点から不適切と考えられ、平成26年度は、投与経路の検討を行う目的で、関節炎動物モデルへのMSC移植実験を行った。コラーゲン誘発性関節炎(CIA)ラットを用いた実験を行った。CIAラットは、誘導(day 0)後10-12日で関節炎が発症し、42日目には、著明な関節破壊が観察される。CIA誘導と同時にMSCの関節内注射投与(IA)、腹腔内注射投与(IP)を受けた群では同様の経過をたどったが、NF-MSC移植を受けた群では発症が14日目に遅延し、関節炎の程度も関節炎スコアで約1/3と軽微で、関節破壊も著明に抑制された。血清学的には抗II型Collagen抗体の産生がNF-MSCで抑制され、リンパ組織の炎症性サイトカイン発現も低下していた。増殖刺激に対するリンパ球の増殖応答もNF-MSC群で抑制されており、以上よりNF-MSCは免疫抑制作用を介してCIAの関節炎、骨破壊を抑制すると考えられた。ラット足関節の検討では、IA群、IP群で関節にMSCが観察されなかった一方、NF-MSC群でMSCの残存がみられた。in vitro実験では、NFに播種されたMSCの増殖はプラスチック培養皿に比して劣ったが、免疫抑制作用や、軟骨分化誘導作用が知られるTGF-βの産生は、NF-MSCにおいて上昇がみられ、炎症性サイトカインであるIL-6産生はNF-MSCで低下していた。以上より、NFはMSCのサイトカイン産生を調整し、それらを局所にとどめることで、CIA関節炎へ効果を発現すると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、平成26年度の目標であった実験を完遂した。
次年度は、関節再生の検討を行う目的で、NFがMSCの分化能に及ぼす影響を検討するとともに、in vivoでの関節再生検討を行う。
試薬代として使用しております。平成25年度、患者由来MSCの入手が不定期であったため、613697円が未使用でした。平成26年度も引き続き患者由来MSCの研究を行い、306270円を使用いたしました。当初予定していたサンプル数より少ないサンプルで、患者由来MSCの実験は完遂したため、残額の307427円は平成27年度の実験に使用いたします。
繰越の307427円および平成27年分の900000円を試薬代として、前述の研究を行います。
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PLOSONE
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10.1371/journal.pone.0114621