研究課題/領域番号 |
25860823
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(相模原病院臨床研究センター) |
研究代表者 |
関谷 潔史 独立行政法人国立病院機構(相模原病院臨床研究センター), その他部局等, 研究員 (90385774)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | アレルギー学 / 気管支喘息 / 気流閉塞 / T細胞 / 平滑筋 |
研究概要 |
T細胞依存性の喘息モデル樹立の目的に、Balb/cマウスをOVA(卵白アルブミン)感作後あるいはDO11.10 transgenicマウスを用いて、まずin vitroで、OVA特異的T細胞クローンを樹立した。無処置マウスに、T細胞を移入し、翌日OVAを経気道的にチャレンジした後、経時的に気道抵抗(RL)、呼吸パターン(Penh)を測定し、気流閉塞をモニターした。OVAあるいはT細胞エピトープペプチドOVA309-323チャレンジにより、RL、Penhの上昇を認めた。次いで、ロイコトリエン拮抗薬montelucast (0, 1, 5 mg/kg)を前投与し、その効果を解析したところ、Penh上昇が抑制された。このことから、T細胞依存性の気流閉塞は、ロイコトリエンの作用を介していることが示唆される。次年度には、ロイコトリエン産生細胞がいかなる細胞なのかを解明したい。メディエータ解明に向けては、培養気管支平滑筋を用いたin vitroの収縮活性アッセイ系を樹立した。マウスprimary気管支平滑筋細胞を培養し、90%以上の純度となった時点で、コラーゲンゲルに包埋し、さらに6日間培養、成熟させた後、収縮活性検出に用いた。in vivoモデルで気流閉塞を惹起するT細胞クローンを固相化CD3抗体で刺激し、その培養上清をKreb’s液に透析後、ゲルにapplyした。無刺激のクローン上清に比較して、活性化T細胞クローン上清では、有意に平滑筋ゲルの収縮活性が確認された。本検出系により、T細胞由来の喘息メディエータの分子レベルでの解析が可能となる。次年度には、阻害剤の作用解析などを通じて、メディエータの正体に迫りたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究申請段階で予定していたin vivoのT細胞依存性喘息モデルの樹立がスムースに進み、T細胞依存性喘息反応が再現性よく確認できた。ロイコトリエン拮抗薬の効果を解析したところ、Penhの上昇が抑制されるというポジティブな結果が幸運にも得られた。次年度以降に、そのメカニズムについて、詳細に解析する足がかりが順調に得られたものと考えられる。 In vitro研究においても、平滑筋収縮アッセイ系が樹立できたことは、たいへん幸運であった。われわれが樹立したT細胞クローンの刺激上清に反応して、ゲルの収縮が誘導されたことは、驚くべき実験事実である。次年度以降に、この反応のメカニズムを解析し、T細胞依存性喘息反応のメディエータを解明できる基盤を十分に確立できたものと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の研究で樹立したマウス培養平滑筋細胞アッセイ系を用いて、活性化マウスT細胞クローン培養上清中の平滑筋収縮活性のcharacterizationを行う。反応系に、種々のメディエータ拮抗薬、まずロイコトリエン拮抗薬montelucastを加えて、薬理学的に解析する。さらに、培養上清を濃縮し、ゲル濾過、イオン交換等生化学的精製を進めて、分子量、pH等の性質を明らかにする。加えて、遅発型喘息反応を惹起するT細胞クローンと惹起しないクローンのトランスクリプトーム、プロテオーム解析を行って、候補分子を絞り込むことを視野に入れ、その前段階としてのサンプルを準備する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
ロイコトリエン阻害薬montelucastの製造元からの提供承認を受ける手続きに時間がかかったため、本研究の開始は早く実験系は確立できていたにも拘わらず、阻害実験の開始までに期日を要した。そのため、詳細な阻害メカニズム、カイネティクスの解析は、26年度に実施することになった。 in vivoの喘息反応モデル実験に用いるマウス、試薬、器具については、26年度により多量に使用する必要がある。加えて、in vitroアッセイシステムにおいても、montelucastの効果を解析するため、試薬、細胞の使用頻度が圧倒的に増すことが予想される。
|