慢性炎症の中心的役割を担うIL-1βが、肺炎クラミジアおよびカーボンナノ粒子により、相乗的に分泌誘導される分子機構の解明を試みた。カーボンナノ粒子としてカーボンナノチューブを用い、成熟型IL-1βの誘導はウェスタンブロット法にて確認した。肺炎クラミジア感染マクロファージにカーボンナノチューブを投与したところ、成熟型IL-1βの分泌が上昇した。カーボンナノチューブ投与による成熟型IL-1β分泌の促進は、カーボンナノチューブの濃度および時間依存的であった。また透過型電子顕微鏡観察を行ったところ、同一細胞内に肺炎クラミジアとカーボンナノチューブの両方が存在している像が観察された。しかしながら、肺炎クラミジア感染マクロファージへのカーボンナノチューブの投与はマクロファージからのIL-1βの mRNA発現には影響を与えなかった。そこで、マクロファージへの取り込みを阻害する阻害剤を用いたところ、成熟型IL-1βの分泌が抑制された。またカスパーゼ1阻害剤の存在下においても成熟型IL-1βの分泌が抑制され、カーボンナノチューブがカスパーゼ1の活性化を促進することが明らかとなった。さらにNLRP3インフラマソームを構成する遺伝子をノックダウンしたところ、成熟型IL-1βの分泌が抑制された。このようにカーボンナノ粒子はカスパーゼ1を活性化することで、肺炎クラミジアと相乗的に成熟型IL-1βを分泌誘導することが明らかとなった。
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