研究課題
若手研究(B)
急性肺傷害(ALI/ARDS)は種々の原因で発症するが、肺の炎症と透過性亢進を特徴とし、急速発症、両側性陰影、低酸素血症を呈し、心原性肺水腫とは異なる病態と定義される。H5N1鳥インフルエンザやH7N9鳥インフルエンザウイルスなど高病原性インフルエンザウイルス感染症では、劇症型ARDS症例も報告されている。ALI/ARDSの研究が肺の炎症極期に対する過剰炎症炎症の制御に着目されているのものが多い。しかし、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の臨床経過で急性期を超えても、その後線維化が起こり呼吸機能低下による死亡率の上昇およびQOLの低下が知られている。新型インフルエンザウイルス(2009H1N1)感染症でも、ICU入室症例の大部分がARDSを呈し死亡率が高いことが知られているが、そのARDS発症症例で10-20%に肺の線維化を認め、長期予後において呼吸機能の低下によるQOL低下が報告されている。ARDSの病態において、急性期および線維化期においても肺上皮細胞のバリア機能の破綻と修復は非常に重要である。Claudin分子は細胞間接着因子として着目されているが、インフルエンザウイルス感染による急性肺傷害における重症化および肺の過剰炎症に引き続く線維化におけるClaudin分子の役割は不明である。今回、我々はインフルエンザウイルス感染によるARDSの病態および肺の修復期における肺上皮の役割をClaudin分子に着目し、これらのノックアウトマウスを使用し病態解明を行っている。
2: おおむね順調に進展している
本年の研究目標であった、非致死性のインフルエンザウイルス投与による肺線維化モデルマウスの作成に成功し、経時的なClaudinの発現の検討を行っている。また、Claudin-4, -18ノックアウトマウスを用いて、すでに我々が確立している劇症型急性肺傷害モデルマウスにおけるClaudin-4, -18の役割についても検討が行われている。
昨年度行ってきた研究を継続するとともに、ノックアウトマウスを用いたインフルエンザウイルスによる急性肺傷害およびその後に続く肺の線維化についての解析を行っていく予定である。
ノックアウトマウスの飼育の問題で、やや実験が遅れているため。次年度は、本年度遅れていた実験を継続するとともに、ノックアウトマウスを用いた実験環境を早急に整えながら次年度の実験を行う。
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