研究課題
急性肺傷害(ALI/ARDS)は種々の原因で発症するが、肺の炎症と透過性更新を特徴とし、急性発症で低酸素血症をきたし、画像所見で両側性の陰影を認め、心原性肺水腫とは異なる病態と定義される。近年、H5N1やH7N9鳥インフルエンザウイルス感染症において、急速進行性で致死率の高い劇症型のARDS症例も報告されている。ここ数十年集中治療領域における医療技術の進歩にかかわらず、ALI/ARDSを一旦発症すると死亡率が40%と高い疾患で、治療法も限られている。ALI/ARDSの研究が多くが急性期における肺の過剰炎症の制御に着目されており、我々の研究室においても劇症型ARDS動物実験モデルを作成し、病態解析を行ってきた。一方、ALI/ARDSの臨床経過において急性期を超えても、10-20%の症例で肺の過剰炎症に伴った繊維化が起こり呼吸機能の低下、予後不良さらにQOLの低下が知られている。ARDSの急性期の病態および繊維化期においても肺上皮細胞のバリア機能の破綻と修復は非常に重要であると考える。Claudin分子は細胞間の接着因子として着目されているが、ARDSの急性期および線維化期におけるClaudin分子の役割は不明である。我々は、劇症型ARDSモデル動物とインフルエンザウイルス感染により肺に過剰炎症の後繊維化を引き起こすモデル動物を対象に、Claudin分子の発現パターンの変化とその役割について検討を行っている。
3: やや遅れている
インフルエンザウイルス感染による肺の過剰炎症後の繊維化モデルマウスの作成に成功し、劇症型ARDSモデル動物とともにClaudinの発現パターンの解析を終了した。また、Cluadin-4, -18に関しては劇症型ARDSモデル動物に対してClaudin-4,-18遺伝子欠損マウスを用いた病態解析が進んでいる。
昨年度行ってきた研究を継続するとともに、インフルエンザウイルス感染時におけるClaudin遺伝子欠損マウスを用いた病態への解明を行ってく方針である。
インフルエンザウイルス感染後に経時的に肺をサンプリングし、Claudinの発現パターンをqPCR、免疫染色などの手法を用いて検討を行っているが、当初予想していた以上にこれらに時間を費やしたため。
引き続き、インフルエンザウイルス感染後の肺傷害・組織繊維化におけるClaudinの検討をこれらの遺伝子欠損マウスを用いた検討を行う。そこで、未使用金に関しては当該研究に充てる予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
J Infect Chemother.
巻: 21 ページ: 138-140
10.1016/j.jiac.2014.08.014.
Emerg Infect Dis.
巻: 20 ページ: 1942-1945
10.3201/eid2011.140440.
Tohoku J Exp Med.
巻: 234 ページ: 111-116