研究課題/領域番号 |
25860828
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
新原 寛之 島根大学, 医学部, 講師 (60362935)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | LAMP法 / リケッチア感染症 / 日本紅斑熱 / ツツガムシ病 |
研究実績の概要 |
平成26年度までに収集し得たリケッチア疑い患者の検体から抽出したDNAを用いて,リケッチア感染症の迅速診断および病原体の同定を行った。その結果,日本紅斑熱8例,そしてツツガムシ病5例の計13例を同定し得た。また,ブラジル紅斑熱疑い1例の検体も存在したが,諸般の事情から病原体の同定は出来なかった。 上記の13検体を用いてloop mediated isothermal amplification (LAMP)法を用いたリケッチア感染症の迅速診断を試みた。具体的には,ツツガムシ病については既報の文献に従ってO. tsutsugamushiの60-kDa heat shock protein GroEL遺伝子をターゲットとしたLAMP法による病原体検出を行った。また,日本紅斑熱についてはR. japonicaの17kDa抗原遺伝子をターゲットに,新規LAMPプライマーを開発して検証を行った。新規プライマーは,LAMP法 設計支援ソフトウェア:PrimerExplorer (https://primerexplorer.jp/)を用いて行った。 その結果,日本紅斑熱では,新規に作成したプライマーを用いたLAMP法による検査系で全て陽性反応が得られ,おおむね良好な結果が得られた。しかし,反応時間は検体間で差があり,再度検討の余地が残されている。また,既報のプライマーを用いたツツガムシ病の検査系ではO. tsutsugamushi のShimokoshi型の検出が出来なかった。既報のプライマーは、Shimokoshi型を想定していないプライマーであり,Shimokoshi型も標的に入れた特異的なプライマーを検討する必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,研究目的に掲げたとおり,実臨床上有用なリケッチア感染症の迅速診断法の確立を行った。具体的には,既報の文献に従い,ツツガムシ病についてはOrientia tsutsugamushi(O. tsutsugamushi)の47kDa抗原遺伝子, 日本紅斑熱についてはRickettsia japonica(R. japonica)に特異的な216-bpのopen reading frame遺伝子をターゲットとして,real-time polymerase chain reaction(PCR)法を用いた迅速診断を行った。また,既報の文献に従って,ツツガムシ病については,O. tsutsugamushiの56kDa抗原遺伝子, 日本紅斑熱についてはR. japonicaの17kDa抗原遺伝子を,通常のPCR法を用いて検出し,得られたバンドを精製後にシークエンス解析および系統樹解析することにより病原体の同定を行った。その結果,日本紅斑熱8例,そしてツツガムシ病5例の計13例を同定し得た。 LAMP法では,従来の等温増幅濁度測定装置(Loopamp EXIA®, 栄研科学)を用いた解析に加えて,等温増幅蛍光測定装置(Genie® III,OptiGene社)を用いて反応及び解析を行い,両者でO. tsutsugamushiの60-kDa heat shock protein GroEL遺伝子の検出が可能であることを確認した。また,既報の方法ではO. tsutsugamushiのShimokoshi型が検出できず,改善の余地があることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
日本紅斑熱については,平成26年度までに開発したLAMPプライマーを用いて,プライマーの検証および改善を行う。また,ツツガムシ病については,Shimokoshi型も検出し得るプライマーの開発を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成25年度・26年度は,計画当初に想定していたよりもリケッチア感染症患者の数が少なく,当講座にて収集し得た検体数も,検査数10件のうち,日本紅斑熱が2検体,ツツガムシ病が1検体,そしてブラジル紅斑熱疑いが1検体とわずかであった。したがって,当研究の当初の目的である,「日本紅斑熱の迅速診断法の確立」のために開発した,loop mediated isothermal amplification法(LAMP法)に用いるプライマーを開発するも,検証するための検体数が少ないという問題点があった。このため,平成27年度も引き続き,リケッチア感染症患者の検体を収集し,開発した日本紅斑熱のLAMPプライマーを検証する事とした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度も,前年度に引き続き,日本紅斑熱およびツツガムシ病などのリケッチア感染症疑い患者について,病原体遺伝子検出法による迅速検査を行い,実臨床上の診断補助に用いる。また,平成26年度までに開発したLAMPプライマーを用いて,プライマーの検証および改善を行う。
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