研究課題/領域番号 |
25860829
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
谷口 亜裕子 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (30403885)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ウイルス / 感染症 / 腫瘍 |
研究概要 |
ウイルスは発癌に密接に関係する。ヒトに癌を惹起する第7番目の癌ウイルスとして、皮膚癌の一種であるメルケル細胞癌よりメルケル細胞ポリオーマウイルス(MCPyV)が発見された。MCPyVはヒトポリオーマウイルスとしては初めての癌ウイルスとして注目を浴びている。しかし、メルケル細胞癌以外の腫瘍についての発癌性については十分に明らかにされていなかった。本研究では、多様な悪性腫瘍におけるMCPyVの蔓延性を調べることを目的にした。 MCPyVは単球に持続感染することが報告されている。この持続あるいは慢性感染が細胞を腫瘍化へと発展させるのかどうかは明らかでない。そこで、単球性白血病におけるMCPyVの感染実態について解析した。急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、慢性骨髄単球性白血病患者末梢血および骨髄より白血病細胞を分離し、DNAを抽出した。このDNAを鋳型とし、定量的リアルタイムPCRによりMCPyVゲノムの検出を試みた。MCPyV Small T領域を標的にした標準曲線とRNasePの内部標準を基に算定した(copies/cell)。調べた全ての単球性白血病ではMCPyVは検出されなかった。MCPyVは慢性リンパ性白血病との関連性が示唆されているが、単球性白血病での関連性は少ないと考えられる。 また、膿胸関連リンパ腫(PAL)にはEpstein-Barrウイルス(EBV)がほぼ全例検出されることから、「EBV関連腫瘍」研究の格好の疾患である。本研究において、biclonal EBVゲノムを有する極めて稀な膿胸関連リンパ腫細胞株の樹立に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、悪性腫瘍におけるMCPyVの蔓延性を調べることを目的のひとつにしている。単球性白血病ではMCPyVは検出されなかったが、この知見はわが国のみならず世界でのサーベイランスが必要であることを示すことができた。 またbiclonal EBVゲノムを有する極めて稀な膿胸関連リンパ腫細胞株の樹立に成功し、その成果は国際医学誌に受理された。 よって、本研究は当初の計画通りに進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で腫瘍病変と非腫瘍病変から検出されたMCPyVのDNA塩基配列を詳細に解析し、その配列に変異、欠損がないかを調べ、野生型MCPyVの塩基配列と違いがないかを明らかにする。欧米においてこれまでに分離されている株と本研究で同定されたウイルス株に相違について詳細に検討し、MCPyVとその病原性および発癌機序の一端に迫る。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、ウイルスゲノム検出のための試薬を中心に最低必要限の予算を計上したため、繰越金が発生した。 次年度は、ウイルス遺伝子発現解析用試薬、蛋白発現解析用試薬、プラスティック器具などの物品費、および研究成果発表のための旅費、学術誌掲載のための費用などに予算の計上を予定している。
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