研究課題/領域番号 |
25860830
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
森永 芳智 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (30580360)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 気道上皮 / マクロライド / 重症化 / HMGB1 |
研究概要 |
(1)気道上皮の免疫誘導機能と微生物増殖抑制作用 気道上皮細胞の感染免疫学的特性を検証するために,ヒト気道上皮細胞株であるH292細胞とレジオネラ,緑膿菌との相互作用の解析を行った.レジオネラ・緑膿菌により,気道上皮はケモカイン(CXCL-10,CXCL-11)を速やかに産生誘導しており,マクロファージなどの単球系やNK cellsの遊走を促すことにより,細胞性免疫を惹起している可能性が示唆された.また,細胞内寄生菌であるレジオネラは,気道上皮内でも増殖可能である.我々は様々な細胞内増殖に与える因子を検証するなかで,TNFαがその増殖を抑制し,さらにその中和抗体の存在下には増殖抑制作用が見られないことを見出した.これは,レジオネラの気道上皮細胞内での増殖速度をTNFαが規定している可能性があり,ヒトの治療で用いられる分子標的薬であるTNFα阻害薬を使用中患者での感染症リスク上昇との関連性が示唆された. (2)気道上皮の防御因子増強による重症化抑制 下気道感染症モデルマウスを作成し,気道の免疫学的機能にせまった.通常の感染モデルマウスでは,重症化する過程で,肺局所の感染から血流感染に進展する.マクロライド系薬は,本薬剤耐性の緑膿菌による感染症であるにも関わらず,血流感染発症までの時間を延長した.抗菌作用では説明が困難であり,以上の成果は,重症化の病態の一部に気道上皮が関与していることを示唆していると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,樹状細胞の免疫学的二面性にもせまることを計画しているが,十分な解析結果がまだ得られていない.しかしながら,in vivoにおけるマクロライド系薬の重症化抑制作用は予想を超えた結果であり,その再現性や新たな解析法の準備などに時間が必要であった.従って,当初の計画通りとはいかないものの,発展的な内容で研究は進展しているためおおむね順調であると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
マクロライド系薬による肺炎重症化の抑制は,注目すべき成果であった.本薬剤が生体の防御因子を増強しているものと推測し,マウスの気道上皮単離を試み,マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を通して,宿主防御因子の解明を進める予定である.また,TNFαを介した気道細胞自体の病原体増殖抑制作用について,具体的な細胞内シグナルやリソソームを介した殺菌作用などとの関わりを進めていく. In vitroとin vivoを融合することにより,気道上皮機能をより具体化していく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
学会発表の予定が次年度にずれ込んだことや,解析に必要な良質の検体の収集準備に時間を要したため. 解析に耐えられる検体の確保の見込みができつつあり,詳細検討の段階に入る予定である.また,海外での成果報告を行う予定としている.
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