研究課題
下気道感染症における気道免疫の病態への関わりを探索する中で,感染初期に観察されるTNF-αの気道細胞中の細菌増殖に与える影響を検討した.自己免疫疾患などで用いられる抗TNF-α製剤投与中の場合に,細胞内寄生菌のリスクが高まることが知られているが,これにはTNF-αが細胞内の菌の増殖を阻害する作用が本来あり,中和することで菌の増殖が促進されるためであることを明らかとした.またその背景には,caspase 3を中心としたアポトーシスが関係していることが推察された.一般診療では,誤嚥のときの下気道感染症で嫌気性菌の関与の証明が難しい.誤嚥の場合にしばしば肺炎が重症化することがあり,マウスモデルを用いてその機序解明にせまった.Prevotella intermediaの培養上清は,肺炎球菌の生体への接着分子であるPAFRの発現を誘導し,肺炎球菌性肺炎の重症化に関わっていることが推測された.他の嫌気性菌での作用は乏しいことから本菌に特有の特徴であると思われた.抗菌薬がもつ免疫調節作用を気道免疫の観点から気道粘液に与える影響を評価した.マクロライド系薬,リネゾリドは,呼吸器主要病原体である黄色ブドウ球菌やアシネトバクターによる気道粘液産生を抑制する作用を示した.アシネトバクターでは,薬剤感受性が内にもかかわらず,マクロライド系薬はマウスの肺炎重症化を抑制する効果も示し,抗菌力とは異なる機序によるまだ未解明の作用が存在することが示唆された.
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
Clin Microbiol Infect
巻: 20 ページ: 831-839
10.1111/1469-0691.12677
Pulm Pharmacol Ther
巻: 28 ページ: 165-170
10.1016/j.pupt.2014.05.006
Antimicrob Agents Chemother
巻: 58 ページ: 4131-4137
10.1128/AAC.02811-13
Infect Immun
巻: 82 ページ: 587-593
10.1128/IAI.00943-13