研究課題
結核菌を含む病原性抗酸菌は、好中球やマクロファージへ貪食されると、食胞へのリソソーム融合を阻害し細胞内寄生する。本研究では、抗酸菌特有の分子と貪食細胞に発現するラクトシルセラミド(LacCer)との認識応答機構を明らかにすることで、病原性抗酸菌による細胞内寄生機構を解明することを目的とした。本研究では平成25年度に、病原性及び非病原性抗酸菌由来リポアラビノマンナン(LAM)がLacCerと特異的に結合することを明らかにした。さらには、ヒト好中球によるLAMコートポリスチレンビーズの貪食はLacCerにより仲介されていることを明らかにした。しかしながら、この時点では、細胞内寄生に繋がる食胞へのリソソーム融合阻害へLAMとLacCerがどのように関与しているかを解明するまでには至らなかった。そこで平成26年度は、『病原性抗酸菌由来ManLAMがLacCerとリソソーム関連情報伝達分子Hckとの関係に影響を与え、食胞へのリソソーム融合阻害を起こすのか』を明らかにすることを目的とした。そこで、好中球へManLAMコートビーズを貪食させると、食胞におけるLacCerとHckとの会合が阻害され、Hckのリン酸化が抑制されていることが分かった。さらに、ManLAMビーズ周囲にはリソソームの集積が起こらないことが分かった。また、siRNAによってHckの遺伝子発現を抑制すると、非病原性抗酸菌であっても、食胞へのリソソーム融合が起こらなかった。これらの結果から、食胞においてManLAMがLacCerとHckとの会合を阻害することで、食胞へのリソソーム融合抑制が起き、病原性抗酸菌が細胞内寄生してしまうことが示唆された。
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