研究課題
近年、東アジア地域の小児において死亡例を伴うエンテロウイルス71(EV71)感染症流行が問題になっている。しかし、EV71による病原性発現機構の詳細はまだ分かっていない。我々はEV71特異的受容体としてPSGL-1を同定し(Nishimura et al. 2009)、EV71-PSGL-1結合の分子的基盤の研究を進めている。本研究では、in vivoでのEV71株の感染増殖・病原性発現機構を明らかにすることを目的とし、PSGL-1結合(PB)およびPSGL-1非結合(non-PB)EV71株を用いたカニクイザル感染実験を行なった。その結果、non-PB接種群のみ振戦などの軽度の神経症状を示し、感染初期の臨床検体から高頻度にウイルスが検出された。PB接種群では明らかな神経症状を示さなかったが、剖検時の中枢神経系組織などからウイルスが検出され、そのほとんどはVP1-145に変異を有していた。両感染群サルの血清中のサイトカイン濃度を測定したところ、non-PB接種群は感染前より高い傾向がみられたが、PB接種群では変動が見られなかった。また中枢神経組織の病理学的解析ではnon-PB接種群全頭とPB接種群のうち中枢神経組織から高頻度にウイルスが検出されたサルにおいて神経細胞の変性・壊死と炎症所見が観察され、その組織病変の程度に明らかな差は見られなかった。以上の結果からEV71感染動物モデルであるカニクイザルにおいてEV71はVP1-145に強い選択を受けつつPSGL-1非依存的に増殖し、in vivoにおいて変異適応したnon-PBが効率良く増殖し、中枢神経系におけるウイルス増殖と病原性発現に関与することが示唆された。
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Journal of General Virology
巻: 95 ページ: 2658-2667
10.1099/vir.0.068528-0