研究課題
X連鎖重症複合免役不全症(X-SCID)に対するより安全な造血幹細胞遺伝治療の確立を目指し、Foamy virus(FV)ベクターを利用した遺伝子導入方法の確立を行った。安定した発現のためプロモーターにはA2UCOE配列を使用し、下流にγc鎖cDNAを組み込んだFVベクタープラスミドを作製した。遺伝子導入T細胞株において、γc鎖の発現とIL-2刺激後のSTAT5のリン酸化により機能の確認を行った。ベクター挿入部位解析では、レトロウイルスベクターに比べて、よりランダムな挿入パターンが認められ、FVベクターの安全性が示唆された。次に、X-SCIDマウスから採取した骨髄細胞に、FVベクターにより遺伝子導入を行い、NOGマウス(NOD/SCID-γc knock out )に移植した。移植後のマウスでは、T、Bリンパ球が出現し、またCD3抗体刺激による 脾臓Tリンパ球の増殖とIL-2の産生、血清のIgM, IgA, IgGの上昇により、T、B細胞の機能的回復を確認した。以上の成果を学術誌に発表した(H25年度)。遺伝子治療効果の更なる向上を目指し、細胞内アダプター蛋白であるLnkのドミナントネガティブフォーム(dNLnk)によるTPOシグナルの増強とそれに伴う造血幹細胞の増殖や生着効率の改善を試みた。PCRによってマウスLnk cDNAの増幅を行い、R364E変異を入れることでdNLnkを作製した。安全なdNLnkの導入を目指し、C末端にオクタアルギニン(R8)を付加し、蛋白としてのマウス造血幹細胞への導入を試みたが、非導入細胞との違いは認められなかった。そのため、インテグラーゼに変異(D64V)を導入したインテグラーゼ欠損型レンチウイルスベクターを作製しdNLnkを導入した。現在dNLnkによるFVベクターの遺伝子導入効果への影響をX-SCIDマウスを用いて検討中である。
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