研究課題/領域番号 |
25860840
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
入江 正寛 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (10597305)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 希少疾患の原因究明 / 新規病因遺伝子の同定 / オーダーメイド治療 |
研究実績の概要 |
宮城県立こども病院にて、ご両親の書面による同意の得られた乳児期発症炎症性腸疾患(IBD)患者の末梢血検体を採取し、東北大学小児科にてDNA抽出を行い解析を行った。 既知のIBD関連遺伝子変異に関しては、平成27年3月までに25検体分の解析が終了しており、そのうちIBDの発症との関連があると考えられたものは6例であった。その内訳は、それぞれIL-10 receptor変異が2例、XIAP欠損症(XLP-type 2)が3例、慢性肉芽腫症(CGD)が1例であった。他の既知の遺伝子異常を有する症例はなく、遺伝子変異の陽性判明率は24%であった。尚、CGDの1例は、酵素活性の低下を来していたものの免疫不全症を発症してはおらず、原疾患の発症を来さない症例でも遺伝子異常を反映してその一部分症としてIBDを発症するケースがあることが示唆された。 既知の遺伝子異常が陰性であった19例においては、引き続き次世代シークエンサーを用いたエクソーム解析にて新規の病因遺伝子が同定できないか検討中である。 遺伝子変異が同定された場合、公開されているSNPデータベースやご両親の遺伝子との比較検討を行い、真の病因遺伝子候補であるか慎重な評価が必要である。 尚、乳児IBD患者の検体に関しては、引き続き新規症例が発生した場合には検体の集積を続けており、随時解析を行っている。また、患者の経過についても定期的に情報収集を行っており、東北大学小児科血液グループと連携して、IBDコントロールのために造血幹細胞移植の適応があるか検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検体の集積は比較的順調であり、既知の遺伝子変異に関する解析は概ね終了している。既知の遺伝子変異が見られた症例も予想していたよりは多く、症例によっては治療法の選択に寄与する結果が得られたことは大きな進展であった。 一方で、既知のIBD原因遺伝子が同定出来なかった症例に関する新規遺伝子の同定については慎重に検討する必要があり、まだ成果を上げることが出来ていない。今後も引き続き病因遺伝子候補の絞り込みが必要である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き新規の乳児IBD患者の検体を集積しつつ、既知のIBD遺伝子変異が同定出来なかった症例の病因遺伝子候補の同定を進めていく。具体的には、エクソーム解析にて同定された候補遺伝子の変異とSNPデータベースとの照合や、両親の検体集積を進めてdenovo変異の有無を検討し、候補遺伝子が病因となり得るかを詰めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
患者検体の集積時期に偏りがあることや、エクソーム解析の効率の都合上、無駄を省くためにある程度検体が集積できた時点で解析を行っているため、今後解析しなければならない検体があるために未使用額が生じた。また、今後、研究成果については公表する必要があることから、引き続き情報収集または発表のための学会参加の旅費を確保する意味でも未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
患者および家族のエクソーム解析を順次進め、既知のIBD遺伝子変異の同定と新規の病因遺伝子候補の絞り込みを進める。また、成果についてまとめた上で、学会発表および論文投稿を進めていく。
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