宮城県立こども病院など全国6施設から、患者および同意の得られた症例ではご両親の検体も送って頂き、ご両親の書面による同意の下で解析を行った。乳児期~学童早期(8歳未満)の早期発症炎症性腸疾患(VEO-IBD)患者およびご両親より末梢血検体を採取し、東北大学小児科にてDNA抽出を行い、全エクソーム解析を行った。 単一遺伝子異常にてVEO-IBDの発症が報告されている53の疾患責任遺伝子を対象に解析を行った。平成27年3月までに25検体分の解析が終了していたが、その後10検体の追加解析を施行した。研究期間中に33家系35症例の全エクソーム解析を行い、そのうちVEO-IBDの発症との関連があると考えられたものは5例であった。その内訳は、それぞれIL-10 receptor A変異が2例、XIAP欠損症(XLP-type 2)が2例、慢性肉芽腫症(CGD)の責任遺伝子であるCYBB変異が1例であった。遺伝子変異の陽性判明率は14.3%であった。また、免疫学的な検索により、全例が機能喪失型変異を来していることを確認した。 既知の遺伝子異常が陰性であった30症例に関しては、VEO-IBDの中に現時点で責任遺伝子が判明していない疾患が複数残されている可能性を意味しており、全エクソーム解析のデータ集積ができていることから、今後、新たな責任遺伝子の存在が明らかになった場合に今回のデータを見返すことによって新たに診断できるケースが増えることも期待できる。 今回の検討により、本邦でもVEO-IBDの患者の中に免疫不全症関連の遺伝子異常を伴う症例が一定数含まれることが明らかになった。また、臨床経過と合わせて全エクソーム解析データを集積することにより、診断・治療に関して適切なオーダーメイドな治療方針が提案出来る可能性を示唆した。
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