研究課題
若手研究(B)
研究代表者が浜松医科大学子どものこころの発達研究センターに異動になったことに伴い、従来の所属では行うことの出来なかった、自閉症スペクトラム患者(成人)の脳機能を直接機能的MRIにて測定することが可能な環境となった。もともと当研究の基盤となっている、自閉症スペクトラムにおける脳機能インバランス仮説は、健常成人の道具使用に関わる行動発動という認知側面のみから想定されていたが、自閉症スペクトラム障害患者の脳機能を直接測定し、且つ、その他の多様な認知的特徴についても、この脳機能的インバランス仮説を検証しうる環境となったわけである。故に前年度の研究は、主に機能的MRIによる成人自閉症スペクトラム患者の脳機能測定を中心に行われた。具体的には、正常成人のデータから推定されていた上記道具使用に関わる脳機能インバランスを、自閉症患者を直接撮像し同定することや、道具使用に関わる認知心理実験の他にも社会状況場面認知に関わる状況適合性の認知に関わる脳機能を測定しその機能的インバランスを解明すること、が試みられた。また当センターには自閉症スペクトラム成人患者及びその対照者の脳形態画像、拡散強調画像のグループデータの蓄積があり、上記機能的なインバランスが形態に及ぼす影響の調査が試みられた。その他、自閉症スペクトラム患者内においても特徴的に言語失行をきたしている例のデータ収集も行われ、機能的なインバランスという観点からその解析が進められている。
2: おおむね順調に進展している
代表者の所属異動に伴う研究環境の変化により、本研究の元となる脳機能仮説をより強固にするための脳画像的な調査をしうる状況となった。もともと予定していた心理実験(行動実験)データ収集に関しては進展が遅れているとも捉えられるが、研究の主たる目的は自閉症スペクトラムの脳機能インバランスの同定であるので、総体的には研究は進展していると考えられる。
自閉症スペクトラム患者の機能的MRI撮影が行えるという現在の環境を十分に生かし、諸処の認知機能に関して機能的インバランスを検索することを当面の目標とする。顔や視線認知に関する脳機能構造の評価、聴覚情報や触角情報に関する機能構造の評価等を、今年度は計画している状況である。
当初初年度に購入予定であったPCや外付けHD等が、想定よりも安価であった為。FMRI実験が増えることに伴い、刺激提示用ソフトウエアや解析ソフトウエア等の購入に充てる予定である。
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Neuroscience Research
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10.1016/j.neures.2014.03.008