研究計画にしたがい、まず川崎病モデルマウスの系を確立した。野生型C57BL/6の4週令オスマウスに対して、CAWS(candida albicans water-soluble extract) 2mg/kgを5日間連続腹腔内投与することにより、川崎病類似の冠動脈周囲血管炎が惹起されることを病理所見で確認できた。そのため、ワイヤー傷害モデルによる評価は不要であると判断した。 このモデルマウスを用い、抗HMB1抗体を腹腔内投与する群、コントロールとしてPBSを投与する群、陽性コントロールとして、ヒトの治療でも使用されるメチルプレドニゾロンを腹腔内に投与する3群に分けて、2週間後と4週間後の病理像および血中炎症性サイトカイン濃度を測定した。その結果、抗HMGB1抗体投与群ではコントロールと比較して、病変の広がり(Extent of lesion)は有意な変化が認められなかったものの、炎症細胞の浸潤の程度(Inflammation score)は有意に低下していた。(P=0.04)また、メチルプレドニゾロンを投与した群では、Extent of lesion・inflammation scoreともに、コントロール群より悪化していた。病変局所の免疫染色では、HMGB1が炎症細胞に強く発現しており、なおかつ核から細胞質に移動している所見が得られた。これらのことから、このモデルマウスの系において、病変の重症度にHMGB1が強く関与していることが示唆された。ここまでの成果を得るところで2年間の研究期間が終了したため、 in vitroでのメカニズムの詳細な解析や、HMGB1の受容体と考えられるTLRの関与までは検討できなかったため、平成27年度の基盤研究Cを獲得し、引き続き検討を続ける予定である。
|