タンパク質の中で同じアミノ酸が連続した領域をポリアミノ酸領域という。全部で20種類あるポリアミノ酸のうち、ポリグルタミン領域、ポリアラニン領域の伸長によって引き起こされる疾患が9つずつ報告されている。ポリアラニン伸長疾患の原因タンパク質の多くは、個体の初期発生に関わる転写因子である。それぞれのタンパク質中のポリアラニン領域が伸長すると、その転写因子が関わる部位の発生が正常に進まずに、形態形成異常を呈する。本研究は、疾患原因タンパク質中のポリアラニン領域の伸長が、そのタンパク質の機能欠損をいかに引き起こしているのか明らかにすることを目的としている。本研究では、伸長ポリアラニンによる優性阻害機構の可能性を検証するため、伸長ポリアラニンタンパク質同士の相互作用と、伸長ポリアラニンと正常長ポリアラニンタンパク質の間の相互作用を、哺乳類培養細胞の系で共免疫沈降法を用いて調べた結果、いずれの相互作用も示唆された。また、同培養細胞においてレポーターアッセイを行い、転写活性を測定した。その結果、野生型を単独で発現させたものと比較して、ポリアラニン伸長型と共発現させたものでは有意に転写活性の低下が見られ、伸長ポリアラニンによる優性阻害効果が確認された。さらに、アフリカツメガエルの初期胚に、各遺伝子コンストラクト(正常長ポリアラニンおよび伸長ポリアラニン)を注入し過剰発現させ、胚の発生における影響を観察したところ、幾つかの遺伝子を注入した胚において、著しい発生異常が観察された。本実験によって、ヒトのポリアラニン伸長疾患の病態の一端がアフリカツメガエルの系において初めて再現され、疾患の新しい動物モデルが構築された。
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