PARP阻害剤は乳癌を中心に現在臨床試験が行われている。血液腫瘍におけるPARP阻害剤の効果を検討し、またPARP阻害剤に高感受性を示した一群を同定し、その分子生物学的基盤を明らかにすることを目的とした。 様々なバックグランドを持つ血液腫瘍細胞株をもちいてPARP阻害剤に対する感受性を検討した。その結果、リンパ系腫瘍細胞株が骨髄系腫瘍細胞株に対して比較的高感受性を示すことが明らかとなった。中でもE2A-PBX1、E2A-HLFを発現する細胞株はPARP阻害剤に対して高い感受性を示した。E2A-PBX1、E2A-HLFを導入すると、PARP阻害剤に非感受性の細胞も高感受性を占めした。PARP阻害剤は相同組み換え修復能が低い細胞に合成致死効果により効率的に細胞死を誘導する。E2A-PBX1、E2A-HLFが発現することにより相同組み換え修復能の活性が低下することが明らかとなり、その結果細胞にDNA損傷を与えると相同組み換え修復能依存ぞDNA修復が遅延し、PARP阻害剤に対して高感受性を示すと考えられた。E2A-PBX1、E2A-HLFが発現することにより相同組み換え修復能の活性が低下する原因を明らかにするためにDNA発現アレイ解析を行った。その結果、E2A-PBX1、E2A-HLFが発現することにより相同組み換え修復にかかわる分子の発現量が低下することが明らかとなった。難治性白血病に対するPARP阻害剤の有用性が示唆された。
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