研究実績の概要 |
本研究は、生後12か月未満の乳児期に発症した急性リンパ性白血病(乳児ALL)について、NK細胞抑制性レセプター(KIR)リガンド不一致ドナーからの同種造血幹細胞移植の意義について明らかにすることを目的としている。具体的には、日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)MLL03臨床試験 (2004年~2009年)に登録された63例のMLL遺伝子再構成陽性の乳児ALLを対象に、造血幹細胞移植ドナーおよびレシピエントのHLA-Cローカスについて調べ、かつデータベースより提供を受けた臨床情報を利用して解析を行うものである。 本研究の背景となるMLL03臨床試験全体の治療成績について、すでに論文としてまとめ、Leukemia誌に掲載された(Koh K, Tomizawa D, et al. Leukemia 2015;29:290-6)。更に、本研究についても解析を終え、2014年4月28日に行われた第9回小児白血病シンポジウム(チェコ共和国、プラハ)にてポスター発表を行った。63例中23例においてKIRリガンド不一致の有無についてのデータが得られ、5例が不一致、18例が一致していた。5年全生存率は不一致群で100%、一致群で58.3% (95% CI, 31.3 - 77.8%)、5年無イベント生存率が不一致群で80.0% (95% CI, 20.3 - 96.9%)、一致群で 44.4% (95% CI, 21.5 - 96.9%) であった。なお、移植片対宿主病については急性型、慢性型、いずれも両群で発症頻度に差はなかった。症例数が少ないために有意差は得られていないものの、乳児ALLにおいてKIRリガンド不一致移植の有用性を示唆する結果が得られた。本成果についても論文執筆を終え、現在投稿中である。
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