研究課題/領域番号 |
25860848
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
廣野 恵一 富山大学, 大学病院, 助教 (80456384)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 心筋緻密化障害 |
研究概要 |
臨床面と基礎研究面の両面から心筋緻密化障害の発症機構の解明するために、まず;、心筋緻密化障害の臨床像を検討した。次に、心筋緻密化障害患者において、胎生期における心筋層の発達・成熟に関わる遺伝子異常の探索を行った。さらに、探索された遺伝子異常が心筋の発達・成熟に及ぼす影響を明らかにするために、患者iPS細胞由来心筋細胞を作製し、機能解析を行った。 (i) 全国調査と臨床像の検討:全国調査により報告された小児期発症の心筋症の症例に対し、二次調査を行い臨床像と遺伝的背景の有無を把握した。特に、家族性の有無、他の心筋症の有無、致死的不整脈や突然死の有無について検討を行った。 (ii) 患者血液サンプルの採取および遺伝子解析:血液検体からDNAを抽出しPCR法で、ダイレクトシーケンス法でDNAの配列を調ベ、遺伝子異常の有無を検討した。 (iii) 患者血液サンプルからのiPS細胞の樹立およびiPS細胞から心筋細胞への分化誘導:採取したサンプルから、レンチウイルスベクターにより細胞のリプログラミング;に必要な因子(Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc)を遺伝子導入し、iPS細胞を作成する。得られたiPS細胞については機能解析にて未分化性を確認の上、心筋細胞への分化に利用する。 リプログラミングにより作成されたiPS細胞は、Bone Morphogenetic Protein (BMP)およびその内因性阻害因子であるActivin A、basic Fibroblast growth factor、Wnt賦活剤およビ阻害剤を用いて、心筋細胞へと分化誘導する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者由来iPS細胞の機能解析を行うにあたり、当初、昨年度は、(i) 全国調査と臨床像の検討、(ii) 患者血液サンプルの採取および遺伝子解析、(iii) 患者血液サンプルからのiPS細胞の樹立およびiPS細胞から心筋細胞への分化誘導:採取したサンプルから、レンチウイルスベクターにより細胞のリプログラミング、を目標に掲げていたが、ほぼ目標が達成された。
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今後の研究の推進方策 |
iPS細胞由来心筋細胞の分化能評価:野生株と患者由来株の間で分化能および形態的な表現において差異を生じるか、遺伝子発現レベルおよび蛋白の発現レベルを評価する。遺伝子発現レベはreal-time RT-PCRにて野生株と患者由来株iPS細胞由来心筋細胞のTnnTやNKX2.5などの心筋特異的mRNAの発現を比較検討する。蛋白の発現レ ベルは免疫蛍光染色およびウェスタンブロット法にて野生株と患者由来株iPS細胞由来心筋細胞のTnnTやNKX2.5 などの心筋特異的蛋白の発現を比較検討する。 iPS細胞由来心筋細胞の増殖能およびアポトーシスの評価:野生株と患者由来株の間で増殖能およびアボトーシスに差異を生じるか、Flow cytometry法と免疫組織染色を行い評価する。増殖能に関しては、iPS細胞由来心筋 細胞をBrdUにて数時間培養し、BrdUを取り込ませた上で、細胞を回収し、抗BrdU抗体を用いて、BrdU陽性細胞と非BrdU陽性細胞の比率を算出し、野生株と患者由来株間で比較検討する。アポトーシスに関しては、TUNEL法を 用いて、免疫染色を行い、野生株と患者由来株間で差異がないか比較検討する。 iPS細胞由来心筋細胞の電気生理学的機能測定:パッチクランプ増幅器と倒立顕微鏡を用いてiPS細胞由来心筋細胞からパッチクランプ法記録を行い、野生株と患者由来株の電気生理学的性質を比較し、催不整脈性の有無を検討する。具体的には静電容量、ナトリウムおよびカリウム等イオンチャネルの電流密度、活性化/不活性化/脱活 性化/脱不活性化速度を検査する。また、今回申請する64ch細胞外電位記録システムを用いて活動電位の発火頻 度および持続時間を検査する。さらに、iPS細胞由来心筋細胞に蛍光カルシウム・イメージング法を適用し、心筋の収縮能に必要な細胞内カルシウムの動態を野生株と患者由来株で比較する。
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次年度の研究費の使用計画 |
患者iPS細胞由来心筋細胞の機能評価、つまり①iPS細胞由来心筋細胞の分化能評価、②iPS細胞由来心筋細胞の増殖能およびアポトーシスの評価、③iPS細胞由来心筋細胞の電気生理学的機能測定、に当初の想定以上に費用がかかると考えたため。 薬品(iPS細胞作製と培養、心筋細胞誘導と培養、RNA調製、RT-PCR)、免疫染色用抗体、心筋細胞刺激用薬剤、パッチクランプシステム消耗品等に重点的に用いる予定である。
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