研究課題/領域番号 |
25860849
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
鈴木 孝二 福井大学, 医学部附属病院, 助教 (10397268)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 癌免疫療法 / 自家造血幹細胞移植 / 骨髄由来免疫抑制細胞 |
研究概要 |
本研究は固形腫瘍に対する効果的ながん免疫療法の開発を目指したものである。自家造血幹細胞移植モデルマウスを用いて実施している。本研究の遂行にあたり、造血幹細胞移植ドナーのがん抗原に対する予備免疫を増強させることが、レシピエントにおける抗腫瘍効果を導くのかという点は重要となるが、IFN-α遺伝子導入を用いてドナーへの予備免疫を高めることが、移植後の抗腫瘍効果が増強しうることを報告した(Suzuki K. Cancer Med. 2013;2(5):636-45.)。そこで、本研究では、実際の臨床で用いられている抗がん剤であるゲムシタビンを用いることでドナーへの予備免疫を増強させることによる、移植後の抗腫瘍効果の変化について検討した。担がん状態にあるマウスに対して、ゲムシタビンの投与を行い脾細胞中の骨髄由来免疫抑制細胞(myeloid derived suppressor cells 以下MDSCs)、制御性T細胞(regulatory T cells 以下Treg)、腫瘍特異的CD8陽性T細胞比率をフローサイトメトリーにより解析した。再現性の確認実験を実施中であるが、現時点ではゲムシタビンの投与によりMDSCを減少させ、それにより、腫瘍特異的CD8T細胞が増加する傾向を確認している。そこで、担がん状態にゲムシタビンを投与して予備免疫を増強させたマウスをドナーとして自家造血幹細胞移植を行った場合、レシピエントマウスにおいて抗腫瘍効果の存在が示唆される結果を得た。この結果についても現在、再現性について確認実験を行っている。今後、ゲムシタビン投与により予備免疫を増強させることで、移植後の抗腫瘍効果を高めることが確認されれば、そのメカニズムについて免疫学的な解析を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ドナーマウスにおけるゲムシタビン投与後の免疫細胞の変化に関する解析はおおむね順調に進行しているが、造血幹細胞移植実験については、9Gyの致死線量の全身放射線照射の影響からか、移植後に死亡するマウスが多く出てしまい対象群の頭数が少なくなり、腫瘍の増大に関する比較検討が困難となった。再度、放射線照射の線量を調整するなど条件設定を検討しなおしたうえで移植実験を行う予定としている。移植前の細胞培養および、ドナーへの腫瘍接種、ゲムシタビン投与など移植までの準備に2週間程度を要することなどから繰り返し行う実験行う際に時間を要してしまうのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
レシピエントマウスに対しては放射線照射を行うことにより、造血幹細胞時に十分な免疫抑制をかける必要があるが、移植後の生存率を向上させるためにも、致死線量よりも線量を減らすことを検討している。レシピエントに対する線量軽減を行っても、これまで得られたデータが示してきた抗腫瘍効果が得られれば、結果的にはより負担の少ない移植前処置でも移植後の抗腫瘍効果を導くことの可能性が証明されることとなり、実際の臨床応用を将来考えるうえでも有用な結果となると考えられる。移植後の抗腫瘍効果について、再現性が確認された場合には、移植後のレシピエントにおける免疫学的解析を進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度に、マウスを用いた造血幹細胞移植を複数回行う予定であったが、移植にあたり、放射線照射装置の条件設定などに時間を要し、かつ、行った移植実験において、レシピエントマウスの死亡が多くなってしまったため、移植における放射線照射線量の見直しを行った。そのため、当該年度に使用予定であった、マウスの購入費、飼育費、免疫学的解析に必要な抗体試薬の購入費などが当初の予定よりも減少し、次年度使用額が生じた。 放射線照射の線量条件設定が完了したことから、初年度できていなかった移植実験については次年度に行い、マウス購入費、飼育費に充てる。その他、初年度に行うことができなかった免疫学的な解析も次年度に行う予定であり抗体など実験試薬の交流に充てる予定である。
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